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第538回

芝浦メカトロニクス(株) 常務執行役員 ファインメカトロニクス事業部 事業部長 黒川禎明氏


32年度までに売上1000億円以上
GNT製品のさらなる成長がカギ

2023/8/18

芝浦メカトロニクス(株) 常務執行役員 ファインメカトロニクス事業部 事業部長 黒川禎明氏
 芝浦メカトロニクス(株)(横浜市栄区)は、長年にわたりFPD分野においてアレイ/セル/モジュールの各工程向けに製造装置を展開。主要サプライヤーとして大きな存在感を誇っているが、2017~19年度の中期経営計画以降、SPE(半導体製造装置)分野への注力・強化を鮮明に打ち出し、20~22年度の前中計では、グローバルニッチトップ製品(GNT製品)と位置づけるシリコンウエハー製造向け枚葉式洗浄装置、フォトマスク製造向けエッチング装置・枚葉式洗浄装置、ウエハープロセス向け枚葉式リン酸エッチング装置、モジュールプロセス向けの高精度フリップチップボンダーの各装置群が売上高を大きく拡大し、22年度のSPE分野売上高は20年度の2.2倍となる415億円まで拡大した。
 さらに、10年後を見据えた長期ビジョン「芝浦ビジョン2033」では、期間内に売上高1000億円以上、ROS20%以上を目指しており、その実現にはGNT製品を中心とした半導体製造装置分野の事業拡大がカギを握る。常務執行役員 ファインメカトロニクス事業部長の黒川禎明氏に話を伺った。

―― 前中計(20~22年度)では、最終年度に当初目標を大幅に上回る実績を達成しています。
 黒川 22年度は売上高610億円(当初目標510億円)、営業利益109億円(同51億円)、ROS17.9%(同10.0%)、ROE31.9%(同13.0%)と、すべての項目で目標値を大幅に上回ることができた。周知のとおり、半導体市場が活況で設備投資が旺盛であったことに加え、装置の長納期化を背景に前倒しでの発注を非常に多くいただいたことが重なった。また、当社では機能的な価値を提供するにあたり、次世代・次々世代のプロセスを見据え、そこで求められる高度な装置性能・仕様を、お客様や部材メーカーなどと緊密に連携しながら共同で開発・実現している。
 加えて、アフターサービス、プロセスサポート、お客様のニーズ具現化などにも力を入れ、顧客価値の提供を心がけている。また、お客様の困りごと解決や、作業負担軽減など、数字に表すことのできない取り組みに対する強化に努めており、評価いただいた結果として当初の目標を大きく上回る業績につながったと自負している。さらに、今後は環境負荷低減に向けた装置の開発を強化していく予定だ。

―― 急成長のなかで見えてきた課題などは。
 黒川 売上高の拡大に伴い、装置の生産キャパシティーを確保(アウトソースを活用)するなかで、部品の調達や工程管理で一部混乱するところがあった。そこでサプライヤーとの連携をこれまで以上に強化するとともに、3月からは新たに物流センターを確保したことで、生産のさらなる効率化を実現している。
 また、これまで個々のお客様のニーズに合わせて装置を設計・製造していたが、現在は共通的な仕様部分は標準化し、個別ニーズにはオプションとして対応している。これにより、部品などのコストダウン、装置の設計時間の大幅な短縮などが可能となった。

―― 23年度からの新中計での取り組みについて。
 黒川 最終年度の25年度に売上高700億円、営業利益105億円、ROS15%、ROE17%を目標としている。このうちファインメカトロニクス事業(半導体・FPD前工程関連)で売上高の6割程度、営業利益の8割を確保していく。GNT製品では、新規顧客や新工程への対応でさらなるシェア獲得を進める。

―― 今後注目のGNT製品は。
 黒川 例えば、枚葉式のリン酸エッチング装置は、これまでロジック/ファンドリーで多く採用いただいていたが、チャンバー数を大きく増やすことで高生産性を実現した新製品を開発中で、24年半ばに市場投入する計画だ。これにより、メモリー関連ならびに生産性を重視されるお客様への拡販が期待される。
 また、最先端のマスク洗浄向け差異化技術として開発中の装置が、凍結洗浄技術を適用した洗浄装置「ARTS」(24年1月リリース予定)だ。超純水が凍る過程で膨張する特性を利用した洗浄技術で、超微小なパーティクルの除去を可能にするとともに、選択的に異物を除去するためパターンダメージフリーを実現している。また、薬液の使用が抑えられ、薬液コストの削減や環境負荷の低減が期待できる。


(聞き手・清水聡記者)
本紙2023年8月17日号1面 掲載

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