電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第662回

JSR(株) 代表取締役 CEO 社長執行役員 堀 哲朗氏


再編よりも業績立て直し優先
まず利益出す「普通の会社」に

2026/1/30

JSR(株) 代表取締役 CEO 社長執行役員 堀 哲朗氏
 半導体材料大手のJSR(株)(東京都港区)が2024年6月に上場廃止、非公開化となってからおよそ1年半が経過した。産業革新投資機構傘下の事業再編ファンド(JIC)が単独株主となり、当時は半導体材料とライフサイエンス(LS)の両輪による事業成長、そして半導体材料業界の再編で主導的な役割を果たすことを掲げていた。しかし、足元では巨額の減損損失を出したLS事業の非中核化を決定。半導体材料業界の再編に関してもトーンダウンした感は否めない。東京エレクトロン出身で、25年4月からJSRのトップに就任した堀哲朗社長は、まずは利益と価値を生み出す「普通の会社」になることを目指す。同氏に同社の現況および半導体材料を軸とした事業戦略について話を聞いた。

―― 社長就任から約9カ月が経過しました。これまでを振り返って。
 堀 いろいろやってきたかなというのが率直なところだ。LS事業で大きな減損を出すこととなり、現在非中核化に向けたプロセスを進めているが、着手した当時は「これは立て直すのは大変だな」と感じた。LS分野に関しての知見がない私からも見ても、経営の一般的な考え方から照らし合わせても難しさを感じた。まだそのプロセスの途中ではあるが、残ったものに関しても事業整理や収益性の改善など、抜本的な策を講じていくことに変わりはない。

―― LSの非中核化など立て直しは何合目まできた印象ですか。
 堀 7合目ぐらいまではきていると思う。ただ、すべてが完了するまであと長くて2年はかかると思う。やはり、LBO(レバレッジド・バイアウト・ローン)を約4000億円抱えるなかでの経営の難しさはあり、これによって設備投資に精査が必要である。当社は現状で2期連続の最終赤字になっており、今期(25年度)はなんとか最終黒字化にもっていきたい。3期連続は避ける、これは社内にも口酸っぱく言っていることだ。

―― 主力の半導体材料事業の現況について教えて下さい。
 堀 25年上期(4~9月)の電子材料事業は、売上高が前年同期比9%増の1175億円、コア営業利益が同11%増の274億円の増収増益となった。先端半導体向けに用いられる材料の出荷が好調に推移した。電子材料事業のうち、半導体材料の上期売上高は同17%増の904億円。なかでも先端ロジック向けが同38%増、先端メモリー向けが同18%増と先端プロセス向け材料が大幅に伸長した。また、地域別では台湾および中国が牽引した。品目別では、主力のリソグラフィー材料だけでなくプロセス(CMPなど)や成膜、先端実装材料の販売も好調だった。

―― EUVレジストの状況は。
MORの韓国新工場が26年から稼働開始(写真は起工式の様子)
MORの韓国新工場が26年から稼働開始(写真は起工式の様子)

 堀 現在主流のCAR(化学増幅型レジスト)は、業界内でもトップクラスのシェアを有している。足元では次世代のMOR(メタルオキサイドレジスト)が先端DRAM向けを中心に伸びてきている。MORはこれまで米国を拠点に開発・生産していたが、現在韓国・清州に最終工程を担うMORの生産工場の建設を進めているところで、今年前半までに稼働を開始する計画だ。

―― ラムリサーチとの協業も発表しました。
 堀 ラムリサーチとは、もともと特許訴訟で係争状態にあったが、25年9月に和解してクロスライセンスを締結した。同社との協業ではドライレジスト分野でプリカーサー、High-NA向けの下層膜の共同開発などを進める。ドライレジストに関しては、当社子会社のヤマナカヒューテックが持つプリカーサー技術なども活かせると考えており、ALD材料は今後の伸びしろも含めて大いに期待している分野の1つだ。
 また、ラムリサーチ以外でも東京エレクトロンやASML、アプライドマテリアルズ(AMAT)など大手の製造装置メーカーとのコラボレーションを進めていく。製造装置メーカーとの協業は、これまでと違った次元でやろうと考えており、これが他社にはない差別化要素になると考えている。

―― 同業他社ではパッケージング材料の強化を進めるところが多いです。
 堀 パッケージング材料は半導体材料売上高のうち一定程度あり、厚膜レジストのほか、今後は基板向けの低誘電基板材料の伸びも見込んでいる。パッケージ分野を展開するにあたっては、先端リソグラフィー材料を社内に持っていることが強みになると考えている。足元ではチップレットなどパッケージ分野の事業機会が増えているが、その出発点はリソで、すべてリソが起点になっている。前工程における最先端分野でリソ材料を通じて、顧客と対話できるのはパッケージ材料を展開するうえで非常に大きなアドバンテージになっている。

―― わかりました。では、改めて半導体材料の再編に対する考え方をお聞かせ下さい。
 堀 先ほど申し上げたとおり、LBOローンを抱えて設備投資を精査する中、またM&Aは現時点、資金的に難しい状態で、再編を主導できる立場にない。まずは業績の立て直しなど自律成長を最優先に経営を行っていく。

―― 再編の旗は降ろしていないということでよろしいですか。
 堀 現在再編の計画は具体化に至ってはいない。私自身、東京エレクトロン在籍時にAMATとの経営統合作業に関わっていたこともあり、事業再編の難しさは知っているつもりだ。そもそも我々が手がけている半導体材料、とりわけフォトレジストなどのリソグラフィー材料に関して「本当に再編の必要性はあるのか」とも考えている。

―― 具体的に教えて下さい。
 堀 フォトレジスト業界は日系大手が5社存在して、数が多すぎるとよく指摘されるが、光源別やレイヤーごとに細かくみていくと、5社での競合ということもなく、だいたいが2~3社の競合状況となっており、決して数が多いとは思えない。この健全な競争環境において、もし企業が一緒になれば、その空いた椅子をアジアなどの海外系サプライヤーに明け渡すことになりかねない。

―― 再上場に向けたプランは。
 堀 電子材料の成長戦略を積極的に進めていく。足元はLS事業を立て直し黒字化することを優先事項としている。再上場に向けた時間軸はともかく、まずは利益を生む「普通の会社」を目指していくことが先決だ。


(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2026年1月29日号1面 掲載

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