半導体パッケージ基板大手のイビデン(株)(岐阜県大垣市)の動向に注目が集まっている。大手のAI半導体メーカーを顧客として抱え、足元の業績も好調を維持する。パッケージ基板で構成される電子事業の2025年度(26年3月期)の売上高見通しは、前年度比29%増の2550億円と従来予想を引き上げている。旺盛な需要に応えるべく、AI半導体向けの主力工場として「大野事業場」が25年10月に竣工。年末から量産出荷も開始している。そして、足元では稼働延期を余儀なくされていた「河間事業場」の立ち上げに向けた動きが急浮上。材料調達など供給面での制約がつきまとうなか、この局面をどう乗り切っていくのか。代表取締役社長を務める河島浩二氏に話を伺った。
―― まずは足元の市場環境について。
河島 やはりというべきか、AI一色というトレンドは変わらない。ただ、業界のなかではAI分野がいつダウントレンドに向かうかという懸念もある。昨年末に北米を中心に半導体メーカーやデザインハウスなど、いくつかの顧客を訪問する機会があったのだが、どこもかなりの受注残を抱えている状況で、みんな口を揃えて「27年までは手一杯」という状況だった。これを聞けて個人的には安心した部分もあり、少なく見積もってもあと1~2年はこの状況が続くとみて間違いなく、当社もこの流れにしっかりと追従していかなければならない。
―― 大野事業場の稼働状況は。
河島 現在、建屋の半分程度に製造設備を導入しており、この一部が稼働を開始している。25年12月から量産品の出荷が始まっており、主要なAI半導体顧客への供給がスタートしている。今後もできる限り製造設備の立ち上げなどを急ピッチで進めていき、27年度中にはフルキャパシティーに引き上げていきたい。
―― 既存工場もAI半導体向けの対応など、リニューアル投資(生産ラインのフレキシブル化)を一部行っている拠点もあります。
河島 大垣工場(Cell2/3)はAI向け製品がすでに主体となっており、フル稼働が続いている。大垣中央工場(Cell4/5)のうち、Cell4はAI対応が完了しているほか、Cell5に関しても現在進行形で対応が進んでいる。26年度からはAI向けの製品出荷が行える見通しだ。
―― 来期(26年度)の電子事業は、計画では売上高3100億円を見込んでいますが、さらなる上ぶれ余地は。
河島 需要は非常に強いものがあるので、あとは我々がどれだけ出せるか、作れるかにかかっている。ただ、大野事業場に関しても設備の立ち上げやメンテナンスに必要なエンジニアが足りておらず、制約条件となっていることは事実だ。また、問題となっていたガラスクロスも、現在公表している計画の達成には支障がないが、アップサイドを狙おうとするとここが一番のボトルネックとなりそうだ。
―― ガラスクロスの調達について、改めて状況を教えて下さい。
河島 セカンドサプライヤーのガラスクロスが含まれるコア材を用いた当社の生産は、25年10~12月期から始まっており、出荷ベースでもこの1~3月期からスタートする見通しだ。ガラスクロスが逼迫するという問題は25年初頭段階で察知しており、当社としてはセカンドサプライヤーの評価認定などを急ピッチで進めてきた。
ただ、セカンドサプライヤーに関してもさらなるキャパシティーの増強は難しく、当社にとって、2社からの調達体制でもギリギリの状況だ。本格的にガラスクロスの供給が増えるのはやはり27年以降で、26年度に向けた事業上のリスクではあることに変わりはない。
―― 河間事業場(Cell6)の立ち上げに向けた動きが慌ただしくなってきています。
河島 河間事業場はもともと、主力顧客向けの専用ラインとして新しく建設したもので、当初は24年の稼働開始を予定していたが、顧客の需要動向を考慮して、稼働のタイミングを先送りする状況が続いていた。25年に入っても状況は好転せず、主力顧客だけでなく、旺盛な需要が見込まれるAI半導体関連の顧客に向けた生産ラインとしての立ち上げも選択肢として考えていたが、25年の夏ごろを境に状況が一変している。
―― 具体的に教えて下さい。
河島 もともとの想定であった主力顧客との間で、河間工場の早急な立ち上げに向けた前向きな議論を展開しているところだ。現在、市場で出荷・生産されている先端チップレットの多くが、インターポーザーを使った構造となっているが、実装工程を含めた高いコスト、そしてインターポーザーの大型化に伴う技術的な限界を指摘されるようになっている。また、このインターポーザーを使ったチップレット構造の生産キャパシティーがまだまだ潤沢になく、26年から本格化するASIC系の需要に対応できないといった問題もある。
この点、主力顧客が進める次世代パッケージング技術はこうした問題を解決するものとして、業界内でも広く注目されるようになってきている。
―― 河間の立ち上げに向けた最終決定は。
河島 現在、顧客との間で条件面を含めた最終的な詰めの交渉を行っている最中だ。我々としても顧客の要請に寄り添って最大限サポートしていきたいと考えているが、大野事業場の立ち上げも進めながら、同時並行で河間の立ち上げを行うのは非常にチャレンジングなもので、そのリソースを確保できるかまだ不透明なところもある。当然、立ち上げに向けた追加投資も必要になるので資金的な負担も増す。このあたりを顧客との間でしっかりとクリアにしていければと思う。欲をいえば、27年のどこかで河間の立ち上げにこぎ着けることができればと考えているが、現実的には28年にずれ込む可能性も否定はできない。
―― 大野、河間に次ぐ投資案件についてはいかがでしょうか。
河島 現在の大野事業場の隣接地にCell9向けのスペースがあり、ここが次期投資の工場建設地となる。工場の申請から建設、設備のセットアップまで考えれば2年以上を要するため、今から着手しても最速で28年稼働という状況になる。既存の大野事業場がフルキャパに到達するのが27年ということを考えると「空白の一年」ができてしまうリスクもあり、なるべく早い段階で新工場の計画を具体化していかなければならない。
―― ガラスコアなど次世代品の開発状況については。
河島 製造難易度が高く、乗り越えなければならない技術的ハードルはまだいくつもあるという認識だ。ただ、半導体パッケージの大型化・大規模化に伴い、電源を強化する必要があるため、その点ガラスコアは非常に優位性があると思っており、反り対策も有機コアより秀でている部分は多くある。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2026年1月22日2685号1面 掲載