10月20日に本稼働する
「オークワ東海食品センター」
筆者は本紙『商業施設新聞』編集部に転属して3年が経過したが、以前は姉妹紙である『半導体産業新聞』も担当していた。半導体産業新聞では、今と同じく1対1のオリジナル取材を重視し、記者会見や懇親会にも参加して、その内容を紙面に落とし込んでいた。
同紙の取材で面白かったのが「工場ルポ」という企画。半導体素子を生産する工場はもちろんのこと、工場に納入する半導体材料や半導体装置といった、関連メーカーの工場もよく取材で訪れた。工場によっては、クリーンルームの中を視察するケースがあり、防塵服を身にまとい、エアシャワーを浴びて取材することもしばしばあった。
取材先からは「岡田さん、装置のウインドウにあまり顔を近づけすぎないで下さい」と釘を刺されたこともあったが、総じて、クリーンルームに入ると次から次へと疑問が浮かぶため、4時間近く取材したという経験もある。商業施設新聞では「開店フラッシュ」という企画があり、これも工場ルポと同じ要領で取材ができる。「だったら、物流センターも同じ要領で取材ができるだろう」と高を括っていたが、(株)オークワの東海食品センターを見学して、改めて現場取材の難しさを痛感した。
残暑が厳しい8月下旬に開かれた「オークワ東海食品センター」の見学会。JR名古屋駅からシャトルバスに乗って40分余りが過ぎたころ、明知東工業団地の一角に大きくそびえ立つ同センターが見えた。同センターは敷地面積5万5200m²で、SRC造り3階建て延べ2万2570m²の常温棟、S造り2階建て延べ1万8839m²〈低温棟(チルド・PC)=延べ1万4615m²、低温棟(農産)=延べ4224m²〉の低温棟、S造り5階建て延べ6893m²の駐車場、RC造り2階建て延べ66m²の排水処理施設で構成される。
シャトルバスは常温棟のそばに停められ、降りて早々に見学会がスタート。まずはエレベーターで3階へ移動し、冷風庫エリア→小分け出荷エリア→自動倉庫エリアと、足早に見て回った。オークワの担当者の話によると、「小分け出荷エリアでは、自動倉庫から流れてきた商品(ケースに入っている)を小分けして、1階のケースマテハンシュートに送ります」とのことだった。
次に2階へ降りると、同じように自動倉庫エリアが設けられており、そのほかにはケースマテハン出荷ラインが設置されていた。同ラインでは担当者から、「飲料品やラーメンなどのケース荷姿を、店舗ごとに区分けします」と説明があった。
最後に、1階はケースマテハン入荷ラインやケースマテハンシュートのほか、自動倉庫エリアも設置されていた。一通り見た段階で、ケースマテハン入荷ライン→自動倉庫→小分け出荷エリアorケースマテハン出荷ライン→ケースマテハンシュートという流れを掴んだが、モノが流れていないので、その正否は確認できなかった。
同じく、低温棟も足早に見て回った。まず階段で2階へ移動し、シューズカバーとヘアキャップを着用。農産を担当する(株)サンライズの加工エリアで、大根の加工をじっくり眺めた後、PC畜産加工エリア→包装値付エリア→PC水産加工エリアと大急ぎで巡回した。しかしながら、PC畜産加工エリアは牛肉や豚肉のスライサーが並ぶだけで、包装値付エリアでは「店舗別に仕分ける画期的なシステムを導入しました」と担当者に説明されたが、モノがないのでイメージは湧かなかった。
今回は“物が流れていない”物流センターを取材したので、戸惑いも多かったが、物が流れている様子を見れば、もっと深く入り込んだ取材ができるだろう、と感じたのも事実。「本格稼働したら改めて取材を申し込んでみよう」と思いつつ、この案件をどのように紙面に落とし込もうか、と頭を悩ませながら、帰りの新幹線に飛び乗った。