電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第533回

(株)東海理化 執行役員 エレクトロニクスビジネスセンター長 櫻井武俊氏


半導体外販で売上50億円目標
少量多品種ニーズに柔軟対応

2023/7/14

(株)東海理化 執行役員 エレクトロニクスビジネスセンター長 櫻井武俊氏
 自動車部品のスイッチを創業のルーツとし、今ではデジタルキーなどのセキュリティーからシートベルトなどのセーフティーまでこだわりの製品群で定評のある(株)東海理化(愛知県大口町)。メカから電気回路まで一気通貫の開発・設計・生産体制を強みとしている。そんな同社が、2023年5月末の「中期経営計画達成に向けた取り組み説明会2023」で、半導体の外販に乗り出すことを宣言し、業界の注目を集めている。同社で内製半導体を含む電子技術開発部隊を率いる執行役員兼エレクトロニクスビジネスセンター長の櫻井武俊氏に、決断の背景や半外販の概要、投資戦略など幅広くお聞きした。

―― 半導体外販を決断された背景は。
 櫻井 半導体不足が深刻化した1~2年ほど前から、当社製品向けのカスタムICを内製していることに着眼した外部関係者からお声がけいただく機会が増えた。様々なマーケティングを通じ、小規模小ロット生産、かつリードタイムも短いという当社の内製半導体製造の特徴が、少量多品種で半導体調達に難航していた産業機器や医療機器、航空宇宙向け企業の方々のニーズにマッチしていることがわかった。かつこれらの用途は息の長いロングテール製品が多いことも見えてきた。自動車業界で培った当社のすべての強みを活かすことが、業界の困りごと解決にもつながるという正の循環が創出できると判断した。

―― 外販される半導体の概要について。
 櫻井 お客様のニーズに合うカスタムICを仕様から設計開発・製造・検査・納品まで一貫で請け負い、外販することを想定している。事前に展示会などで顧客ニーズを調査したところ、既存の当社の6インチウエハーを使用した1.0μmプロセスではニーズを満たしきれないことが把握され、アナデジ混載ICまで視野に入れると0.35μm化は必要不可欠と判断した。

―― 新たな投資が必要になりそうです。
 櫻井 ご指摘のとおり、従来は年間数億円程度の更新投資にとどまっているが、今回の外販に向けて総額数十億円規模の思い切った投資を計画している。ただし、既存の第2半導体工場(クリーンルーム面積2500m²)内に入る範囲にとどめる予定だ。当社既存設備の6~7割を活用する想定のため、6インチウエハー使用を継続し、0.35μm向けに要する新たな装置の導入を行う。26年からの稼働開始を目指す。
 ちなみに、当社本社工場(敷地面積約11万m²)内には後工程を担う第1半導体工場もあり、ウエハーテストなどの検査工程や特殊用途向けの組立などを行っている。これらの設備も必要に応じ、活用していく。

―― 外販用の生産数量イメージは。
 櫻井 前提として、現状の内製半導体生産能力は年間5000万個程度で、外販用は年間最大20万個程度にとどまる。しかし0.35μm向けの設備導入、およびリードタイムを現状の30日から20日に短縮する生産改善も実施し、最終的に内製半導体生産能力は年間6700万個程度が可能になると見込む。当社の半導体製造は少数精鋭(前工程で2直14人体制、後工程も2直6人体制)による生産効率の高さでも定評があり、この強みも活かしていく。

―― 一方、ECU事業も強化の方向性です。
 櫻井 当社はスマートECU、ミラーECU、シートECUなど多様なECUの開発・量産でトヨタ自動車グループ向けを中心に豊富な実績を築いている。今後、つながる車と言われるように、OTAでアップデートされることが前提となってくる電動車は車内をすべてシリアルネットワークでつながるかたちになっていく。ゾーンやセントラルECUへの機能統合でECU搭載数が減少すると見る向きもあるが、末端部分は従来のメカからデジタル回路にシフトし、それに伴う小さな制御回路搭載数も増加すると考えている。
 トヨタグループの垣根を越えた他の自動車OEMやティア1およびティア2、自動車の電動化に伴うモーター駆動部分など小型化・低コスト化ニーズを掘り起こし、当社ECU製品の販路を拡大していく。

―― 今後の展望を。
 櫻井 半導体の外販はまさにゼロからのスタートであり、大きなチャレンジになる。前述のとおり、ロングテールのカスタムICの外販を中心に、30年度に売上高50億円の達成を目指す。また、ECU事業では30年度に売上高240億円を目標に見据えていく。全社売上高目標の30年度6000億円超の達成に向けた成長エンジンとして貢献していければ本望だ。

(聞き手・高澤里美記者)
本紙2023年7月14日号1面 掲載

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