田中貴金属グループで半導体用ボンディングワイヤーを手がける田中電子工業(株)は、ボンディングワイヤーの国産化第1号メーカーとして、今日に至るまで長年、半導体産業を支えてきた。近年は主流の金(Au)ワイヤーに代わり、銅(Cu)や銀(Ag)など新たなボンディング材が台頭し、業界環境の変化も早くなっているが、その中でも同社の存在感は際立っている。同社のボンディングワイヤー事業に長く携わってきた井関氏、秋元氏の両氏に事業の現況および将来展望、さらに強さの源泉について語ってもらった。
―― まずは事業立ち上げの経緯からお願いします。
井関 田中電子工業は三井金属鉱業と田中貴金属工業が将来の半導体用材料事業の拡大を目指し、合弁会社として1961年に設立された。半導体用ボンディングワイヤーは最初に米国セコン(SECON)社が商用化に乗り出したが、その後国内でも半導体産業の成長に伴う、官民からの国産化ニーズが高まり、田中貴金属工業が1962年に初めて国産化に成功し、1964年に田中電子が量産を開始した。その後、本格事業化を目的に、いち早く海外展開に乗り出したのも大きな特徴で、1978年にはシンガポール工場を設立し、海外生産を本格化させている。海外進出は田中貴金属グループ内でも早く、シンガポールの拠点はその後の海外拠点の基礎となっている。
―― シェアなど現在の業界内のポジションは。
秋元 現状、ボンディングワイヤー全体では4割以上のシェアを確保できている。主力のAuワイヤーでトップシェアを確保しているほか、CuワイヤーでもベアCuタイプ、パラジウム(Pd)コートタイプともに業界2番手に位置している。Cuワイヤーは業界全体で使用量が伸びており、当社のシェアも上昇傾向だ。特にPdコートタイプは、セカンドボンディングの接合性を大きく改善した独自構造のワイヤーを市場に投入しており、13年は2割以上のシェアを確保できる見通しだ。
(聞き手・本紙編集部)
(以下、本紙2013年10月9日号5面)