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第513回

TechMagic(株) 代表取締役CEO 白木裕士氏


調理ロボットの本格導入を開始
日本ケンタッキーと開発契約締結

2023/2/17

TechMagic(株) 代表取締役CEO 白木裕士氏
 TechMagic(株)(東京都江東区)は、調理ロボットなどの開発を進めるスタートアップ企業。「テクノロジーによる持続可能な食インフラ社会を実現する」ことを事業ビジョンとして掲げ、世界初のパスタ自動調理ロボットの実稼働が2022年から始まるなど、その取り組みが注目を集めている。今回、代表取締役CEOの白木裕士氏に話を伺った。

―― 22年の取り組みから伺います。
パスタ自動調理ロボット「P-Robo」
パスタ自動調理ロボット「P-Robo」
 白木  18年の創業から様々な研究開発や実証を経て、22年は当社製品の本格的な導入が始まった年となった。その1つとして、(株)プロントコーポレーションが東京・丸ビルで22年6月にオープンした新業態「エビノスパゲッティ」に、当社がプロントコーポレーションと共同開発したパスタ自動調理ロボット「P-Robo」が導入された。P-Roboは、ロボットが状況に合わせて4つのフライパンを同時にハンドリングするなど、パスタの調理工程を自動で行う世界初のロボットソリューションで、1食目は約75秒、連続調理時の2食目以降は約45秒で調理し、1時間あたり最大90食を調理できる。パスタソースの投入量を0.1g単位で調整することもでき、メニューによって最適な加熱温度・フライパンの回転速度を設定することで、安定した品質を実現できる。また、P-Roboの導入によって、エビノスパゲッティでは調理工程に必要な人員を1人にすることができている。

―― そのほかにP-Roboが導入された店舗はありますか。
 白木 22年11月にオープンしたエビノスパゲッティの2号店「エビノスパゲッティ エトモあざみ野店」(横浜市青葉区)のほか、22年12月にリニューアルオープンした「PRONTO 西新宿店」にもP-Roboが導入された。ROI(投資利益率)も良く、調理効率の向上や省人化効果などに加え、調理スタッフのトレーニングコストが不要になるといった効果もあり、3年程度で投資回収できるロボットソリューションだと試算している。

―― 開発面での取り組みは。
 白木 中華料理をはじめとした様々な炒め料理を調理できるロボットの開発を進めており、「I-Robo」として23年内の上市を計画している。また、揚げ物の調理作業に対応できる「F-Robo」の開発も進めており、2月にフライドポテトを自動調理するロボットとして、日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)とテスト開発契約を締結した。現在までに初期検証が完了し、製品化と店舗導入を見据えた開発を進めており、23年秋ごろに国内のケンタッキーフライドチキンの一部店舗への導入を目指している。今後も対応できる工程やメニューの幅を広げる取り組みを強化していく。

―― 調理ロボット以外の取り組みは。
 白木 セントラルキッチンや食品工場での作業を自動化する業務ロボットの開発も進めている。その1つとして、ポテトサラダのような不定形かつ粘着性の高い惣菜を、高い重量精度で連続的に容器に盛り付けることができるロボット「M-Robo」を開発した。また、キユーピー(株)と連携して食品製造工場の自動化に向けた研究開発を進めているほか、日清食品(株)とも盛り付け作業や栄養バランス調整を自動で担う調理ロボットの開発に取り組むなど、大手企業との連携も進めている。

―― 取り組みを強化していることはありますか。
 白木 22年から本格的な導入が始まり、23年からは導入スピードを加速する段階に入る。そのなかで導入先が全国に広がっていくことになるが、すべてを当社1社で対応することは現実的ではなく、導入の拡大に向けた供給体制の強化やコストダウンに向けた量産パートナー、アフターサービスの充実に向けた保守メンテナンスパートナーなど、様々な領域において幅広い企業との連携が必須となる。すでに各領域でパートナー網の構築を進めており、当社の取り組みにご関心をお持ちいただいた方は、ぜひお声がけいただければと思う。

―― 23年を含めた今後の方向性を。
 白木 まずはP-Roboをはじめとした調理ロボットや業務ロボットの取り組みをさらに発展させていく。また、先述のような実績を受け、飲食チェーンを展開する企業をはじめ、ホテル、病院、社員食堂といった業種からも問い合わせが増えており、こうしたお話にもきっちり対応していきたい。拡大するプロジェクト数へ対応として人員も増やしており、22年9月には本社オフィスを従来比約4倍のスペースの場所に移転し、開発をはじめとした各種スペースを拡充した。今後、追加の資金調達なども検討しながら、中期的な上場も視野に入れていきたい。
 食産業の市場に目を移すと、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に加え、人件費の上昇なども重なり、飲食業の人手不足は都市部でも深刻化しており、地方都市では人手不足ではなく「人手不在」という状況も生まれている。
 こうした労働力が減少していく日本社会のなかで、付加価値が低い作業は自動化し、人材を付加価値が高い作業に充てることが重要になると考えており、そのためにロボットなどの最先端技術を活用して食産業における非効率な作業を自動化していくことで、当社が創業時からビジョンとして掲げる「テクノロジーによる持続可能な食インフラ社会」を実現していきたいと思う。

(聞き手・副編集長 浮島哲志)
本紙2023年2月16日号11面 掲載

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