最先端ICパッケージ基板向けの分割投影露光装置(ステッパー)をはじめ、フォトマスク検査用EUV(極端紫外線)光源で圧倒的なシェアを占めているウシオ電機(株)(東京都千代田区)。半導体市場が一時的な調整を余儀なくされるなか、ステッパーやグループ企業が手がける直接描画装置(DI)は、旺盛な需要が継続する。ステッパーの供給能力の引き上げも積極的に進めており、早ければ2023年度下期には業績にも寄与する見通しだ。同社の代表取締役兼執行役員副社長の川村直樹氏に今後の事業戦略を聞いた。
―― 半導体の需給が緩んできましたが。
川村 確かにメモリーを中心に一部調整に入っていることは承知している。しかし、高性能なCPUやGPUなどの需要はそれほど落ち込んでいないとの認識だ。当社のステッパーはこうしたハイエンドのICパッケージ基板向けに大きく伸長している。
―― 22年度上期(4~9月)業績ならびに通期の見通しを教えて下さい。
川村 最先端ICパッケージ基板向けなどのステッパーやDIが含まれるUV装置事業は、主力製品の販売好調で前年同期比63%増となり1年前に比べ82億円の増収となった。なお、通期の光学装置事業の売上高は前年度比14%増の550億円を見込んでいる。
最先端ICパッケージ用のステッパーは、上期の好業績が寄与して通期でも増収する。下期は若干の調整が入るかもしれないが、23年度以降からさらに販売が加速する見通しだ。一方でDIも販売増を見込む。
―― グループ企業のアドテックエンジニアリングが手がけるDIも好調のようですね。
川村 そのとおりだ。ライン/スペースで4μm/4μmの解像度を誇るIP4を筆頭に、高性能パッケージ基板向けの先端DIとして出荷が大幅に伸びている。さらに、高精度な装置となるDE-2も開発済みだ。マルチダイやファンアウトWLPなど、先端パッケージ向けの再配線形成に適した最先端DIとなる。グループとして総合力を発揮していく。顧客にとって露光装置の様々な選択肢が広がることは魅力だろう。
―― ステッパーの供給体制を引き上げていますね。
川村 旺盛な需要に応えるべく19年、21年に続き、22年5月にも3回目の能力増強を発表した。主力の御殿場工場(静岡県御殿場市)に加え、播磨事業所(兵庫県姫路市)でも装置の供給能力の拡大を実施している。クリーンルームの新設や設備の拡張を行っている。24年度までには協力工場とも連携して、生産能力を現行の倍に引き上げる計画だ。関連投資額は当初の予定どおり35億円を予定している。
播磨事業所は、御殿場事業所が多忙を極めていたころから応援部隊を派遣していたことから、ステッパーの扱いに慣れている人材も多い。このため、増産対応はスムーズに進むとみている。早ければ23年度下期から売上高に貢献してくるだろう。
―― 次世代プロセスに対応した新ステッパーの開発にも注力している。
川村 次世代機の開発ではさらなる細線化が要求されており、開発の難易度が上がってきている。特に重ね合わせ精度でも±3μmを下回る範囲での調整が求められてくる。さらに高い生産性も維持しなければならない。また、基板が多層化してきており搬送系などの開発課題も出てきている。グループで取り組んでいるDI技術も活用しながら、次世代機の開発を鋭意進めている。
―― フォトマスク検査用EUV光源の状況については。
川村 半導体市況の低迷もあって想定よりも伸び悩んでいる。少し我慢のときだろう。本格的には24~25年度にかけて市場が立ち上がってくるとみている。一方で保守・メンテナンスは順調に拡大している。
(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2022年12月22日号5面 掲載