気がつけば、筆者自身も今年で32歳。若者と名乗れなくなってから何年を経ただろうか。年齢を重ねるごとに若者の感覚から離れていっていることを否めなくなってきた。例えば、この記事を執筆している時点では、「第104回全国高等学校野球選手権大会」が開催されている。かつては阪神甲子園球場で活躍する高校球児を「同世代の球児を応援する」という思いで見ていたが、ここ数年は「このショートは守備範囲が広い」などと素人目で客観的に分析したりして、どこか他人事のような感じで観戦している。
同様に、テレビで若者の間で流行っているものや言葉を紹介されても、知識として理解している場合もあるが、共感できないことが多くなってきた。この感覚は、新業態開発なども含め多くの開発担当が抱えている課題だろう。解決するために、10~20代の人々にアンケート、ヒアリングをするということもできるだろうし、思いきって若い社員に開発などを任せるという方法もあるだろう。
最近取材した中で、若い社員に任せるという手法を選んだのは、「原価ビストロチーズプラス」などの飲食ブランドを手がける(株)THAN(京都市下京区)で、京都市内に新業態の創作天ぷら酒場「てんぷぅ~天ぷらとアテとワイン~」を7月28日にオープンした。天ぷらをアテにワインなどの酒を楽しめる飲食店で、メニューは「海老」や「特大穴子」などの定番から、日替わり3種類の海鮮を海苔で巻いた「名物!てんぷぅ巻」などの創作のものまで、天ぷらだけで30種類以上を用意している。ドリンクもワインやカクテルなど約50種類を取り揃えている。
この新業態について、THANの社長は「若者、女性にフォーカスできる業態を開発したかった。そのため、今の流行が分かっている若手につくってもらった」と話す。料理は色々な種類のものを数多く注文してもらえるように小皿で提供したり、この小皿のデザインもSNS映えするようなものを意識的に選ぶなど、メーンターゲットである20~30代の女性を集客できるような工夫も凝らしているという。さらに、内装も若手の社員が担当し、オープンキッチンで清潔感があり、開放的な空間を演出している。
この春、当社にも若い人々が入社した。筆者も自然と若手から中堅という域に達する。その中で、無理して若者の感覚を身につけるというより、流行りを取り上げた企画の際は、任せるということが重要だ。そのため、無責任にならず、若者からの企画がやりやすい環境づくりや、そのサポートが筆者の役割になってくるだろう。