電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第487回

(株)ネクスティエレクトロニクス 代表取締役社長 柿原安博氏


QCDへのこだわりが武器
ソフトウエア人材1200人体制

2022/8/12

(株)ネクスティエレクトロニクス 代表取締役社長 柿原安博氏
 豊田通商グループのエレクトロニクス商社として、2017年4月に(株)トーメンエレクトロニクスと(株)豊通エレクトロニクスが合併して誕生した(株)ネクスティエレクトロニクス(東京都港区)。合併・統合から5年を経て、カーエレクトロニクス分野を中心に、その存在感は高まり続けている。22年4月から同社代表取締役社長に就任した柿原安博氏に現況や強み、各種施策、抱負などをお聞きした。

―― ご略歴から。
 柿原 愛媛大学を卒業後、1985年に豊田通商に入社し燃料部に配属され、その後海外現地法人の社長など総合商社の中で幅広い知見・経験を得た。エレクトロニクスには97年から本格的に携わっている。03年には半導体グループを独立させて豊通エレクトロニクスを立ち上げ、07年から代表取締役専務を務めた。直近は、22年3月まで豊田通商の執行幹部として化学品・エレクトロニクス本部COOの任にあった。

―― 現況・業績は。
 柿原 22年3月期の全社連結売上高は約4500億円を達成した。うち8割弱を自動車関連が占め、残りを産業機器関連および複写機などイメージング関連が占める。23年3月期も増収見込みだが、4~8月の大手国内自動車メーカーの減産規模は期初予想の10~20%減に至っており、動向を注視している。ただし、中長期的には自動運転、OTA(Over the air)、電動化など需要拡大を確実視している。

―― 貴社の強みは。
 柿原 ソフトウエア力、およびQCD(品質・コスト・デリバリー)へのこだわりにある。自動車業界ではソフトウエア人材が求められている。そのため、ソフトウエアに精通したエンジニアを自社で約400人、資本提携先で約800人確保し、計1200人で体制を構築している。また、総合商社グループとしてのダイナミズムから出資案件、新規事業、グローバルなネットワーク(世界30拠点)があるほか、電動化、自動運転関連ではトップ技術者と企画・開発段階からともに携わるなど、他社にはない強みを持ち得ている。

―― QCDの「Q」について。
 柿原 合併前の08年から安城市の物流倉庫内に「豊通オートモーティブクオリティサポートセンター(TAQS)」を開設し、カーエレ部品の品質サポート、不具合解析などに加え、業界特有のドキュメント作成なども提供している。品質面では高評価を得ている。

―― 先々を見据えた布石も打たれています。
 柿原 日本の自動車産業の国際競争力向上に貢献すべく、国内主要自動車メーカーとともに、ソフトウエアモデルベースの流通プラットフォーム構築に取り組む「MBD推進センター(JAMBE)」に立ち上げ時から関与している。また、当社も幹事会社であるソフトウエアの標準化団体「JASPAR」の活動も、セキュリティー、OTA、ソフトウエアディファインドビークルと活発化している。資源リスクにさらされている電池の先を見据え、スペクトロニック製小型水素燃料電池(FC)を使ったシステム販売を日本で初めて開始するなど、FCへの取り組みも強化中だ。まずは無人航空機、ロボット、農機具などへの拡販を通じて脱炭素化に貢献する。

―― QCDの「D」については。
 柿原 QCDの「D」は商社としての肝である。当社はグループ会社である豊通物流と協力し、安城デバイスセンター内に、新たに電子部品専用の最新設備を導入した自動倉庫(3020m²/4階建て鉄骨造)を建設している。半導体、電子部品の供給リスク対応に向けて、さらなる物流倉庫のDX化を推進するため、23年早々にも稼働予定だ。保管能力は現行の約2.2倍へ高まる。

―― 今後の展望は。
 柿原 お客様に対する貢献、資金効率という軸、ここを重視していく。EMS(製造受託サービス)しかり、ODM(機器開発)しかり、M&Aしかりだ。また、資金効率という点では、利益率の大小よりもキャッシュフローがプラスか否かで経営判断していく。自動車業界では今後、電動化、自動運転、コネクテッドに向けて半導体、電子部品の需要は飛躍的に増加し、当社業績も必然的に伸長する見通しだ。

―― 新社長として抱負を。
 柿原 会社も従業員もお客様も、幸せを感じられる会社を目指したい。実現に向けて、JASPARなどのエコシステム運営などを含む当社機能とノウハウをさらに強化し、SDGsの達成を通じて世界中の人々にエレクトロニクスで世界を楽しくするための施策を講じていく所存だ。

(聞き手・高澤里美記者)
本紙2022年8月11日号1面 掲載

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