電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第477回

Tianma Japan(株) 代表取締役執行役員社長 于徳樹氏


厦門新工場でスマホシェア拡大
秋田で車載アセンブリー開始

2022/6/3

Tianma Japan(株) 代表取締役執行役員社長 于徳樹氏
 中国のパネルメーカーである天馬微電子は、ディスプレーパネルのサプライヤーとして、中小型、車載、産業機器向けを展開し、テレビ向けは手がけない方針を貫いている。同グループの一翼を担う日本子会社のTianma Japan(株)(TMJ)代表取締役執行役員社長の于徳樹氏に、事業戦略や市況、製品展開などについて伺った。

―― まずは足元の事業状況から。
 于 半導体や部材の不足、物流問題などが要因となり、なかなか受注残が解消されないが、需要が旺盛なため、生産すればしただけ出荷されるような状況だ。産業機器向け市場は、3~4年のサイクルでアップダウンがあり、2021年度(21年12月期)はちょうど上昇の時期にあったことや、前述の市況から、グループ全体で業績は好調だった。
 部材不足が解消すれば需給バランスは落ち着くだろうが、先行きは不透明だ。現状のような生産逼迫は今後も続き、22年末まで解消されないのではないか。また、4~6月期は上海のロックダウンの影響についても注視する必要がある。

―― スマートフォン(スマホ)向けの戦略を。
 于 スマホ市場は21年12月ごろから減速傾向にあり、当社も市場同様に縮小している。しかしそのなかでもフレキシブル基板の有機ELは伸びており、特にハイエンドスマホにおいては必須部材となっているため、注力していく方針だ。T17工場(武漢市)とT18工場(厦門市)では、G6のフレキシブル有機EL生産ラインを保有している。T18は22~23年にかけて試運転を開始し、23年度の業績に貢献させる計画だ。さらに、同じく厦門に、G8.6工場(T19)を新設する。a-Si/酸化物半導体ラインを計画しており、工期は1~3期、全部で12万枚/月の生産能力を整備する。同工場は、ノートPCやモニターなどのIT系、車載向けパネルを生産するほか、スマホ向けでも活用する方針だ。24年に稼働を開始し、25年の業績に寄与する見込みだ。

―― ハイエンドスマホでは、LTPSバックプレーンが主流ですね。
 于 a-Siベースのスマホディスプレーは、多くの中国メーカーがアフリカなどの新興国市場向けに展開している。同市場向けは数量が多く、かつ伸長しており、高価格な有機ELやLTPSではなくa-Siがメーンだ。当社が持つa-Si生産ラインはG5サイズのため、これまで満足な数量を手がけることができなかった。G8.6工場が稼働すれば、生産量の課題が解消されるだけでなく、圧倒的な数量を提供することができるようになる。スマホに関しては、ハイエンド向けのフレキシブル有機ELだけでなく、a-Siで数量も獲得し、スマホパネルのサプライヤーとして世界トップ3に食い込む。現在はLTPSでシェア1位を獲得しているが、a-Siと有機ELパネルも拡大させていく方針だ。

―― 新工場では、今後酸化物バックプレーンの展開も期待できますね。
 于 酸化物はa-Siラインがそのまま活用できるため、今後のパネルニーズに沿ってシフトさせることが容易だ。特に、ノートPCやモニターなどのIT系パネルは、大型、高精細化のニーズが高く、酸化物の採用や浸透が早いと見ている。大型化が進む車載ディスプレーにおいても、酸化物の期待値は大きい。

―― 車載向けについて。
 于 産業向けと同様に好調に推移している。コロナ禍の影響で自動車の生産台数は減少したが、車載ディスプレーは搭載数量が増え、大型化が進んでいるからだ。10~15型前後はLTPSがa-Siを置き換えて伸長しているが、これ以上のサイズはa-Siが主流だ。今後もサイズによりすみ分けられ、大型化が進む車載向けではa-Siが有利だとみている。当社が注力するインパネ部分は一枚パネル化の要求が強く、増えてきている。最近では、27型サイズの一枚パネルなども受注しており、CID(Center Information Display)向けでも14型以上のディスプレーが求められている。車載向けもG8.6工場の稼働が期待されるところだ。当社は車載ディスプレーで2年連続トップシェアを獲得しており、今後も数量を拡大させていく。

―― TMJの秋田工場については。
 于 古いG2(370×470mm)サイズのA1ラインを研究開発用に特化させ、G3(550×660mm)のA2ラインを量産用に残した。秋田工場はグループにおける研究開発拠点と、特定顧客向け量産などを手がけている。このほか、車載用複雑モジュールのOEM工場としての設備を導入し、23年に本格稼働させる予定だ。同設備は自動化を図り、当社ならではの知見を活かした車載向けの複雑なモジュールを手がけている。単純なOEM工場ではないが、自動化により顧客ニーズに応じた変更が簡便にできる点が特徴だ。今後、ディスプレー以外のOEMについても検討していく。

―― 天馬グループにおけるTMJの役割や目標について。
 于 TMJはグループ全体の日本販社の役割も持ち、近々に連結売上高で全体の10%を担うことを目標としている。現状は8~9%程度で、まずは22年度に販社として500億円の売り上げを目指す。日本のお客様は要求が厳しく、繊細で素早いレスポンスを望まれる。このニーズに対応できるのがTMJだ。生産はグループの大きな量産工場で手がけ、設計やアフターフォローなどのトータルの窓口をTMJが担うことで高い信頼を勝ち得ており、お客様からの指名も多いと自負している。

(聞き手・澤登美英子記者)
本紙2022年6月2日号6面 掲載

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