ハイテク電子材料の国産化を推進中の中国で、パネル用カラーレジストの量産から半導体用フォトレジストやCMPスラリーなどの開発を進める新興電子材料メーカーの阜陽シネーバ(SINEVA、欣奕華材料科技、安徽省阜陽市)の黄常剛CEOと陸金波COOに今後の事業戦略について伺った。
―― まずは会社紹介を。
黄 2013年設立のシネーバグループは、北京市を本部に4つの事業から成り立つ。そのうち、当社は電子材料事業を主体として安徽省阜陽市に工場がある。グループ内には装置事業(安徽省合肥市)やAI関連事業(浙江省海寧市)、汎用航空機事業(遼寧省瀋陽市)の会社もある。中国のハイテク材料開発の国家プロジェクト「863計画」で07年にカラーフィルター(CF)用カラーレジスト(RGB)の開発をしていたプロジェクトを引き継ぎ、15年から阜陽工場で量産を開始した。研究・開発の主要メンバーは、米国や韓国、中国、台湾地区などの業界内の専門家や博士、修士などで約70人、全従業員は約200人だ。
―― 現在の主要製品は。
黄 15年から中国のパネルメーカーにCF用カラーレジストを出荷している。中国のパネル生産の拡大に合わせ、出荷量は17年の120tから倍増ペースで20年には1000tに増加。21年は1200tを出荷し、22年は2500tの出荷を目標としている。
当社は中国の国産メーカーとして、最初にカラーレジストの量産出荷を始めた。BOEやCSOTのG10.5やG8.5工場向けに出荷し、中国市場でトップシェアを持っている。また、17年からブラックマトリクス(BM)形成用のブラックレジストを量産開始。20年には低温硬化型カラー・フォトレジストも開発した。
―― 有機EL材料の開発は。
陸 現在は年産500kg程度の開発ラインで有機ELの発光材料を開発し、顧客側でサンプル評価している。評価完了後は、年産2tの生産ラインを構築する計画がある。
これまでカラーレジストの開発で日本の顔料分散液(Mb)メーカーと協業してきたが、今後は有機ELモジュールなどの開発も検討しており、これら日本の原材料メーカーとのビジネス交流を深めていきたい。
―― 阜陽工場について。
黄 阜陽工場は敷地面積が約20万m²あり、現在はそのうちの第1期投資として約半分を使用している。工場棟の建築面積は3.6万m²。カラーレジストの生産ラインは8本、年産能力4000tで稼働している。あと同4000tの拡張余地があり、23年後半に投資を予定している。
―― 今後のターゲット製品は。
黄 半導体用フォトレジストを製品化したい。i線やKrF、ArF用フォトレジストを開発し、現在は顧客評価している段階だ。24年初頭にいずれかの少量出荷を見込んでいる。今後は半導体用フォトレジスト事業の発展を加速させるため、ArFとKrFの開発に使う露光装置を積極的に導入する考えだ。
また、半導体用のウエット材料として、CMPスラリーやダイシング切削液、レーザーコート剤も開発している。CMPスラリーは顧客評価を通過したので、22年後半に生産設備の導入を予定している。年産能力は計3200tを計画している。半導体用の電子材料開発でも日本の原材料メーカーとの交流を広げ、中国市場の潜在力に関心がある日本企業と協力関係を築いていきたいと考えている。
―― 売上計画については。
黄 19年と20年の成長をベースに、21年の売上高は4.2億元を達成した。22年は6億元弱を目標としている。23年後半には中国の証券取引所で株式上場を計画している。これを機にパネルや半導体材料の開発と量産を拡大させ、30年には売上高100億元を目指す。そのためには、電子材料だけでなく、太陽電池など新エネルギー関連の分野にも製品群を広げていく。
(聞き手・上海支局長 黒政典善)
本紙2022年5月19日号1面 掲載