商業施設新聞
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No.853

下北沢でもじゃもじゃに触れる


山田高裕

2022/4/19

 商業施設において、文化・芸術のイベントが行われるのは珍しいことではない。古くは百貨店の催事などがあるが、近年はサブカルチャー方面でのイベントも盛んだ。こうした文化面でのイベントや取り組みを売りの一つとする商業施設も最近は出てきている。

 3月30日に開業した下北沢駅近くの商業施設「ミカン下北」の内覧会に足を運んだ。下北沢は文化・音楽で有名で、雑貨や古着屋などが雑然と並ぶ。この下北沢らしさを追求し、屋台街風の飲食エリアや雑貨店、書店を揃えた下北沢ならではの施設とした。その中にはイベントスペースもあり、覗いてみたところ、そこには何とも言えない奇妙な塊が展示されていた。何だこれはと思い近くのスタッフに聞いてみたところ、この塊は3Dプリンターでの造形中に失敗して作り出されたものだという。このイベントスペースでは、こうした3Dプリンターの失敗作を集めたイベント「もじゃもじゃコンテスト展」が開催されていたのだ。

「もじゃもじゃコンテスト展」で展示されたオブジェ
「もじゃもじゃコンテスト展」で展示されたオブジェ
 3Dプリンターは基本的に熱されたフィラメントを積層し造形するものだが、振動などの理由で積層が失敗してしまうと、もじゃもじゃとした物体が出力されてしまう。今回の「もじゃもじゃコンテスト展」はこうした失敗作を集めたものだ。実際に見てみると映画『もののけ姫』に出てきた「タタリ神」のような、何とも言えない前衛的な外見にユーモラスさも加わっている。会場にずらっとならぶ「もじゃもじゃ」は、それぞれ個性もあり、ずっと見ていると人に見せたい、展示したいという気持ちも理解できるような気分になってくる。

 出展スタッフは、今回「ミカン下北」にて展示した背景について「こうした不完全なものを楽しむ、面白いと思う姿勢は、ミカン下北が掲げる『未完地域』のコンセプトにも合致していると思い、出展に至った」と述べた。いずれにせよ、こうした一風変わった展示物は、様々な文化、店舗が雑然と集まり、カオスな雰囲気を魅力としている下北沢にふさわしいものだと感じた。

 その土地ならではの商業施設では、ただ単にメーンターゲットに合わせたテナントをリーシングすればよいというものではない。雰囲気やデザイン、人流の工夫というハード的なものから、その土地にふさわしい催事、文化イベントの取り組みも重要だ。今回のイベントは、こうした土地ならではの、施設の船出のイベントとして興味深いものだと思った。
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