商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.829

韓国、食品輸出規模は史上最大


嚴在漢

2021/10/26

 グローバルな韓流フィーバーにより、2021年に韓国の食品輸出は史上最大規模を記録する見通しだ。伝統的に内需産業とみなされてきた食品が世界の味覚を魅了しつつ、韓国輸出産業の担い手になっている。『食文化』とも言われるように、食品は各国の習慣や文化と密接に関わることから、食品輸出は文化外交の典型とも言える。そして韓流フィーバーは「K・フード」に対する関心と連動し、さらなる期待が膨らんでいる。

 韓国の主要食品メーカーは、新型コロナで低迷していた海外ビジネスを再開し、拠点の確保に取り組んでいる。CJ第一製糖(ソウル市中区)は、米国中西部に位置するスーフォールズ(Sioux Falls)に56.2万m²規模の工場敷地を確保し、水道や電気などのインフラ建設のための段取りを進めている。同社が米国に生産ラインを先行して増やす背景は、20年に売上高が1兆ウォン(約971億円)を突破したビビゴ餃子の爆発的な需要増に対応するためだ。すでに米国全域における餃子生産工場の稼働率は90%に達している。また、21年下期(7~12月期)には、19年に買収した米冷凍食品会社(シュワンス・カンパニー、Schwans's Company)の営業ネットワークを活用し、全土に3万カ所強の店舗で販売する計画だ。

多種多様なインスタントラーメンを陳列するソウル市内の大型割引店
多種多様なインスタントラーメンを陳列する
ソウル市内の大型割引店
 インスタントラーメン大手の農心(ソウル市銅雀区)は、21年末に米国での第2工場の完成を目指す。同工場を本格稼働すれば、米国とカナダに加えて、メキシコと南米地域まで供給することができる。これを通じて同社は、数年内に全社売上高における海外の割合を50%まで引き上げる方針だ。同社の第2工場では袋麺向け1ラインとカップ麺向け2ラインを優先的に建設する。すべての生産ラインが完成すると、第2工場だけで年間約3.5億個のインスタントラーメンが追加生産できる。同社は21年、米国のインスタントラーメン市場において第2位へ浮上することを目指す。20年には22%の市場シェアで、第2位の日清食品(24%)との差は2%まで縮まっている。

 同じインスタントラーメン大手の三養食品(ソウル市城北区)は、海外の現地法人を設立し、営業ネットワークを拡大している。同社は21年8月、米ロサンゼルスに「サムヤンアメリカ」を設立したのに続いて、12月には中国・上海に「三養食品上海有限公司」を設立する。同社では、ピリ辛焼きラーメンの人気により、輸出が増加し始めた16年から20年までの間で、海外部門は年平均で41%の急成長を記録した。同じ期間中の全社売上高のうち、海外売上高が占める割合は26%から57%へと2倍強にまで増加した。同社の輸出前線基地である密陽市(慶尚南道)の新工場が22年に完成すれば、海外の需要増に弾力的に対応できるうえ、現地法人とのシナジー効果も期待されている。

 このように韓国の大手食品メーカーが海外の現地拠点の拡大に踏み切る一方、中小食品メーカーはオンラインモールを通して、海外市場を攻めている。中小食品メーカーは、情報の不足や高い参入障壁、専門人材の不足などといった背景から、オンライン市場への参入に苦難を強いられてきた。このため、韓国政府は海外の大型オンラインモールに「韓国食品パビリオン」を開設し、市場参入の障壁緩和に乗り出している。韓国農林畜産食品省は中国最大オンラインモールのTモール(天猫)内に韓国食品パビリオンを20年11月に開店し、運営中である。また、東南アジアの最大オンラインプラットフォームのショッピー(Shopee)と提携し、21年にマレーシアやフィリピン、台湾などにも次々に韓国食品パビリオンを開設した。同省は、21年末をめどにシンガポール、また日本にも韓国食品パビリオンを追加開設していく計画だ。同省の資料によれば、21年7~9月期の農食品の暫定輸出規模は、前年同期比12.3%増の61.9億米ドル(約6809億円)となった。韓国を代表する食品のキムチは、同14.1%増の1億2380万米ドル(約136億円)を記録。特に、韓国産インスタントラーメンは日本向けの輸出額が同27.3%増の4690万米ドル(約52億円)となり、日本では大きな成功を収めている。

 韓国は新型コロナ禍という厳しい環境において、韓流フィーバーを活用した食文化の伝播に取り組んでいる。予想外の好調をみせるK・フード関連の海外ビジネスは、今後さらなる拡大が期待されている。
サイト内検索