電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第444回

エイブリック(株) 代表取締役社長兼CEO 石合信正氏


受注旺盛、車載搭載比率も向上
社内事業牽引するリーダー育成強化

2021/10/1

エイブリック(株) 代表取締役社長兼CEO 石合信正氏
 エイブリック(株)は、セイコーインスツルから半導体事業が独立して発足したSIIセミコンダクタを経て、2018年に現在の社名に変更した。20年4月からはミネベアミツミ(株)の子会社として、注力するアナログ半導体事業の中核を担っている。代表取締役社長兼CEOの石合信正氏に、事業展開などについて伺った。

―― 事業の状況は。
 石合 20年度は、新型コロナの影響により、上期は車載、産業機械系の需要が落ちた一方で、巣ごもり需要でノートPCやワイヤレスイヤホン、スマートフォン、タブレット向けやデータセンター向けが業績に貢献し、また下期には車載、産業市場の回復も見られたため、売上高は減収となったが営業利益は当初計画値を大幅に上回る結果を残すことができた。また同時に、18年度から開始した中期経営計画においても、3期連続で営業利益拡大を達成することができた。

―― 21年度の状況は。
 石合 新規の製品開発において、マーケティングやデータを活用しながら、高収益が得られて継続性が保証されつつ、価値を訴求できる製品について吟味し、また、社内においてはコアコンピタンスが合致するかの検証を経て、製品構成を決定した。
 この結果、車載向け電源、医療診断向け、高圧センサー向けIC、クリーンブースト(CB)における製品展開で、実ビジネスに結びつく成果を得られた。これら4つの分野を中心に、ミネベアミツミグループの一翼として、全社で掲げる8本槍戦略(ベアリング/モーター/アクセス製品/アナログ半導体/センサー/コネクター・スイッチ/電源/無線・通信・ソフトウエア)に貢献していく。
 足元の事業状況は旺盛な受注があり、受注残も非常に多くある。待っていただいているお客様には大変申し訳ないことだが、顧客対応に追われる毎日だ。

―― 車載向けでは、新製品の発表が続きます。
 石合 20年度から21年度にかけて、新製品の立ち上がりが継続している。採用も進み、これをいかに横展開し拡販していくかということに注力している。自動車1台あたりに搭載される当社製品の数量が格段に上がってきたという実感もある。現状、売上高における車載比率は2割程度だが、その倍程度まで伸ばしていく計画だ。プロモーションもマイルストーンを作成して計画的に進めている。

―― 医療、高耐圧向けIC、CBについては。
 石合 医療施設で用いられる画像診断装置を、家庭向けにモバイル化しようという動きがある。このニーズに応えるべく開発中で、21年度中にサンプル出荷する予定だ。高耐圧向けは詳細は申し上げられないが、探知機用途など特殊分野のニーズに応えていく。
 CBについては、漏水検知として、NTT東日本様の施設への採用を、8月に発表したばかりだ。今後の実ビジネス化にも期待してほしい。

―― 営業活動などは。
 石合 E(インターネット)関連を強化している。WEB上でのセールスやウェビナーを相当充実させた。また、世界のWEB展示会にも関連分野はもれなく出展している。
 人材的には、ミツミ半導体事業や今後取得するオムロンMEMS事業との一体化を進める意味でも、社内のリーダーシップの強化が喫緊の課題となっている。成果主義で変革を起こすインフルエンサーを求めている。インフルエンサーとは、情報発信して影響力を持って会社を牽引していくだけでなく、情報通信におけるリテラシーもきっちり持ったリーダーということだ。この人材育成と確保の強化を目標に掲げて進めている。

―― 8月1日に現職(ミネベアミツミ(株)常務執行役員 ミツミ事業本部半導体部門長 兼エイブリック事業部長)にも就任されました。抱負を。
 石合 エイブリック、ミツミともにアナログ半導体を手がけるメーカーとして、すでに確立した事業のプラットフォームがある。需給逼迫のなかでこの強さを崩さず、共通部分と補完部分についてともに強化していく必要がある。まず、共通の外注先に対する共同購買や短期のベンチマークのシェア、生産の補完などを進めることでBCPと利益に直結させ、21年度中に結果を出していくのが私の使命だ。
 また、10月に取得する8インチの野洲工場(滋賀県)とMEMS事業についてもグループ内での協力関係を迅速に図っていく。同工場については、旺盛な需要に応じて生産能力に対してラインの操業率を上げねばならないなかで、非常に重要な拠点を獲得できたと思っている。現在ミツミと協力して製品を選別し同工場にて生産を拡大していく計画中だ。


(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2021年9月30日号3面 掲載)

サイト内検索