シリウスロボティクス(Syrius Robotics)は、中国・深セン市に本社を置くベンチャー企業。物流施設や倉庫を中心に活用されている自律走行型ロボットを展開しており、日本での採用も増加している。今回、同社の日本法人であるシリウスジャパン(株)(東京都江東区越中島2-1-38)の総経理であるグレース・ニエ(Grace Nie)氏に話を伺った。
―― 貴社の事業概要について。
グレース シリウスロボティクスは2018年に中国で設立したロボットベンチャーで、独自の協働型ピッキングロボット「FlexComet」を展開しています。FlexCometは、物流施設や倉庫を中心に活用されている自律走行型ロボットで、WMS(倉庫管理システム)から注文を受けると商品があるエリアまで自動で走行し、搭載されたディスプレーに注文品を表示。そして倉庫作業員が商品をピックアップ&スキャンすると梱包エリアまで自動で移動します。こういった特性により、作業員の移動距離を大幅に短縮でき、人的ミスも削減できることから、倉庫の生産性を大きく向上させることができます。
―― 貴社の強みは。
グレース 当社はロボットのハードやソフトだけでなく、クラウドマネジメントシステム「FlexGalaxy」なども含めたソリューションを提供でき、そのコストパフォーマンスも高い評価をいただいています。導入に際して施設に追加で設備を設置する必要もなく、短期間で現場に実装できる点も評価を得ており、中国ではインターネット通販用の物流施設を中心に、化粧品、アパレル、医薬品など幅広い分野で活用されています。
―― 日本での展開について。
グレース 19年4月にシリウスロボティクス初の海外オフィスを日本に設置し、日本法人のシリウスジャパンを立ち上げました。シリウスジャパンのオフィスにはデモセンターも併設しており、当社のロボットを実際に体感していただくこともできます。日本での引き合いも増えており、物流サービス事業を展開する(株)関通が運営する「楽天市場」向けの物流拠点では30台のFlexCometが採用され、1日の商品出荷量を従来比2倍にすることに成功しました。また、大手メーカーの部品倉庫などでも導入されています。
―― 企業間連携も進めていますね。
グレース 当社のようなベンチャーが日本で展開するためには様々なパートナー企業の協力が不可欠で、現在、船井総研ロジ(株)、三菱商事(株)、WMSなどの物流IoT技術に強みを持つ(株)シーネットIoTソリューションズ、物流システム機器を取り扱う(株)ジャロックといった企業と連携しながら拡販に努めています。今後、販売を日本全土に拡大していくにあたり、さらに幅広い企業と連携していければと考えており、当社の製品や取り組みにご興味のある方はぜひお声がけいただければと思います。
―― 新たに取り組まれていることは。
グレース 中小企業や個人事業主向けEC物流を手がける(株)KEYCREWと共同出資し、新会社の(株)ROBOCREWを2月に設立しました。ROBOCREWでは、ロボット、クラウドマネジメントシステム、メンテナンスサービスなどを定額料金(1台あたり月8万~10万円)で提供するRaaS(Robot as a Service)ビジネスを展開しています。お客様からみると導入時の初期投資ゼロでロボットを導入できます。また、仕事量の増減に応じてロボットを追加するといった柔軟な運用も可能で、アパレル事業を展開する(株)ウィゴーでは30台が採用されています。
―― 開発面での取り組みについてはいかがでしょう。
グレース ロボットの新型モデル「FlexSwift」の開発を進めています。ロボット本体の高さが1.6mに伸び(FlexCometは1.3m)、75Lの折りたたみコンテナを2つ搭載することができます。また、商品ピッキング業務の補助に加え、格納(棚入れ)業務の補助にも対応できるようになり、9月ごろに市場投入する予定です。
―― 日本市場における今後の方針をお聞かせ下さい。
グレース まずは引き合いをいただいている方へのサポートをしっかりと行っていき、RaaS事業の拡大やFlexSwiftの市場投入に向けた取り組みも加速させ、日本市場において21年後半(7~12月)に300台、そして22年に1000台の採用を目指していきます。当社は10月13~15日に東京ビッグサイトで開催される「国際物流総合展2021」などにも出展を予定しており、そういった場で様々な方とお話をさせていただき、当社の製品を知っていただければと思います。
(聞き手・副編集長 浮島哲志)
(本紙2021年7月29日号9面 掲載)