商業施設新聞
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No.811

スタバの小さなおもてなし


今村香里

2021/6/22

 近年のスターバックス(以下、スタバ)では、観光地や特別な立地に出店し、その立地の特徴を活かしたデザインを導入しているコンセプトストアが話題を呼んでいる。建築家の隈研吾氏が設計した「太宰府天満宮表参道店」では、隈氏が得意とする木組みを取り入れたデザインが参道で人々の目を惹いている。コーヒーだけでなく、その空間も魅力のひとつで、全国にあるこうしたコンセプトストアを巡るファンもいるほどだ。

 コンセプトストアのような特別なデザインは、実は観光地だけではない。先日オープンした神戸三宮阪急ビルでは、駅高架下の商業施設「EKIZO神戸三宮」にスタバが出店している。コンセプトストアとまではいかないが、特徴的なデザインを施している。

 駅立地ということで、電車をイメージしたデザインが施されている。高架下のため、横に長い店舗区画になってしまうが、それを活かして窓際に客席を配置し、窓の形状も電車ならではの上下に開閉するバランサー窓のような構造を採用した。店内は、電車に乗って車窓から外の景観を眺めているような気分を味わえる。スタバは、このような高架下の小さな店舗でも、デザインに工夫を凝らしているのが来店者の心をくすぐる。

EKIZO神戸三宮店は車窓をイメージした客席が特徴
EKIZO神戸三宮店は
車窓をイメージした客席が特徴
奥にはソファシートタイプの客席もある
奥にはソファシートタイプの客席もある


  ちなみに神戸のコンセプトストアは、登録有形文化財の異人館をリノベーションした「神戸北野異人館店」や、港にある公園メリケンパーク内にある「神戸メリケンパーク店」が有名だ。神戸メリケンパーク店は西日本最大の店舗規模で、船と港をテーマにしたデザイン。船のような形状の外観に加え、壁一面は開放感抜群のガラス張りが特徴で、クルージングを楽しめるような雰囲気を味わえる。

 今後もスタバのコンセプトストアの出店が楽しみだが、まちナカの小さな店舗にも、その立地ならではのデザインが施されていたりする。コーヒーなどメニューの味だけでなく、その店内空間も味わって欲しいという、スタバから顧客へのちょっとした小さなおもてなしが伝わってくる。これからスタバの店舗を巡ってみようという人には是非、お気に入りの空間や店舗を見つけて欲しい。
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