電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第416回

東京エレクトロン九州(株) 代表取締役社長 林伸一氏


ウエット装置 過去最高の勢い
生産の外出しや自動化を推進

2021/3/12

東京エレクトロン九州(株) 代表取締役社長 林伸一氏
 東京エレクトロン九州(株)(熊本県合志市福原1-1)の発祥は、1987年2月のテル九州(株)の設立に始まる。今や売上高2670億3700万円(2020年3月末時点)規模の一大カンパニーに躍進し、工場は過去最高の生産状況にあるほど活況だ。合志事業所と大津事業所の2カ所を持つが、開発・製造するコーター/デベロッパーは世界でブッチ切りのトップシェアを有する。同社で陣頭指揮を執る代表取締役社長の林伸一氏に話を伺った。

―― 熊本ご出身ですね。
  熊本市帯山で生まれ、熊本学園大付属高校を出て、熊本大学で機械を学んだ。卒論は「磁気の軸受け」に関するものであった。96年に東京エレクトロン九州に入社し、当時の従業員数は約1000人未満だったが、今は協力会社を含めて約4000人規模となっており、まさに隔世の感がある。

―― 入社して感じたことは。
  とにかく少人数で集まり、ワイワイガヤガヤという雰囲気であった。廊下でも多くの人が打ち合わせをして、実に楽しそうな会社だなと思った。そしてまた、上司と部下という縦割りの区別がなく、いつでもどこでも対等に議論できるという社風であり、これは今も続いている。東京エレクトロングループ全社に通じる気風であり、確かに仕事は厳しく、ひたすら忙しいのであるが、爆発的な成長をもたらしたのは、自由度の高い社風にあると真に思っている。

―― 主力のコーター/デベロッパーの状況は。
  生産の約3分の2がコーター/デベロッパー、約3分の1が洗浄分野の装置だが、工場全体は過去最高に匹敵する稼働状況が続いている。半導体メーカーからの受注、引き合いは順調だ。総力を挙げて量産に拍車をかけている。

―― 21年度上期の見通しは。
  このままでいけば、さらに上回ってくるとみている。台湾向けに大きな強みを持つが、韓国/中国向け、米国向けも良いだろう。日本国内向けがもっと伸びてくれると嬉しい、といつも思っている。

―― 設備面での課題は。
  検査工程の自動化をもっと進めたい。AIの活用も重要と考えており、ビッグデータの集積と分析に力を入れている。品質の維持、納期の厳守を考えれば、熊本および九州一円に拡がっている協力企業の生産拡大に大きな期待を持っている。例えば、これまで部品の調達から組立、調整、検査まで当社内で一貫して行っていたが、装置をブロックごとに分類し、提携する協力企業内で各々のブロックを組み立て、検査まで終えて、そのままお客さまへ出荷するブロックアウト生産を増やしていく。

―― 地域貢献活動については。
  地域の皆様への感謝や応援の気持ちを伝えていく活動は非常に重要なことだ。熊本の豪雨被害の折には、被災された方々が1日でも早く生活を取り戻せるよう東京エレクトロングループとして1億円の寄付をさせていただいた。今回のコロナ禍では10万枚のマスクを寄贈しており、工場周辺の清掃活動なども行っている。今年はライトアップクリスマスとして、熊本市電のイルミネーション電車への協賛、熊本県3カ所サプライズ花火の打ち上げなども実施した。

―― 部下に対して常に示唆していることは。
  「目標を高く持て」と言っている。達成しなくてもいい。とにかく、ハードルを上げていけば、何かが視えてくる。自分の経験からいっても、先輩たちの教えからいっても、これは正しいと思っている。また、リーダーはあるところで「わざとスキを見せる」ことが大切。スキがない人には相談しにくいということもあるためだ。

―― 女性力の活用は。
  男性優位社会を今こそ変革すべきだと思う。優秀な理系の方は積極的に採用したい。メカやプロセスを女性エンジニアにも担当していただき、新たな技術の確立と生産性の向上を推進していきたい。


(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2021年3月11日号1面 掲載)

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