(株)ZMP(東京都文京区小石川5-41-10、Tel.03-5802-6901)は、2001年の創業以来、ロボット技術や自動運転・自律移動技術をコアに、自動運転開発向けの製品やサービスを提供している。人手不足解消が産業界の喫緊の問題となっており、コロナ禍での3密回避なども叫ばれるなか、省人化に向け同社の物流支援ロボット「CarriRo」(キャリロ)への注目が高まっている。同社CarriRo事業部長の笠置泰孝氏に話を伺った。
―― キャリロについて教えて下さい。
笠置 「モノの移動を便利にするロボット」として、16年より販売している。製品は、自律移動機能および追従機能から選べる台車型搬送ロボット、19年に販売を開始した無人フォークリフト、最大2.5tの貨物牽引が可能で、20年末から販売開始予定の無人牽引車を展開している。
―― 販売状況は。
笠置 現在、導入企業数は累計で200社を突破しており、1社平均で約3台導入していただいている。最近は追加発注をいただく事例が増えている。多いところでは、1拠点で20台ほど導入している事例や、会社トータルで30~40台導入している企業もある。現在は台車型搬送ロボットの導入がメーンとなっているが、無人フォークリフトの引き合いも非常に多くなっており、20年末~21年にかけて本格的に導入される予定だ。Web上に製品事例として掲載しているソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株)や秋田エプソン(株)、(株)ライジングなど、エレクトロニクス関連企業への導入事例も多い。海外企業への導入は、中国、韓国、タイ、シンガポールなどアジア圏で進んでいる。
―― コロナ以降の引き合いの変化は。
笠置 巣ごもり消費の増加により、物流施設での需要が高まった。日用品や医療系、流通系からの引き合いが増加している。社内の事業におけるキャリロの位置づけが上昇しており、当社全体の売上高に占めるキャリロ事業の売上割合も伸び、新たな事業の柱として成長している。
―― どういった環境への導入に適しますか。
笠置 汎用性を1つの軸として、導入のしやすさを追求している。従来の磁気テープを用いたAGVタイプの搬送ロボットは、レイアウト変更が多い場所や変更が困難な場所への導入には適さなかった。キャリロはむしろそういった場所への導入に適している。扱いがシンプルなランドマーク型を採用しており、誰でも簡単に導入およびレイアウト変更を行うことができる。また、ランドマークのアクションにバリエーションを持たせているため細かい動きにも対応可能で、既存の工場にも導入しやすい。
―― 貴社製品の強みを教えて下さい。
笠置 キャリロは、単体のロボットで完結するのではなく、「搬送」という一連の流れに対応できるように開発を行っている。台車型搬送ロボット、無人フォークリフト、無人牽引車を共通のクラウドで一元的に管理でき、拠点全体の搬送を無人化していきたいという顧客のニーズに、すべてキャリロシリーズで応えることができる。
また、顧客によって求めている自動化の程度は異なり、段階的に自動化を進めたいというニーズもある。そこで、キャリロではまずミニマムな機能を提供し、より高度な運用をしたい場合にはアドオンできるような仕組みを整えている。
―― 製品に搭載する電子デバイスに求める性能は。
笠置 障害物検出用を中心としたセンサーのニーズは高まっている。例えば、周囲360度を正確に測位できるセンサーなどがあれば活用したい。直近のモデルはLRF(レーザーレンジファインダー)での検知を採用しているが、こういった部材のコスト低減も目指している。
―― 今後の開発テーマについて教えて下さい。
笠置 フォークリフトが行き交う場所、アスファルト上などランドマークの設置が困難な場所の走行や、高精度の位置決めに対応してほしいという声がある。よって、ランドマークにプラスアルファする技術が必要だと考えている。
その1つとして、SLAM技術を併用したモデルを21年3月にリリースする予定だ。周囲の環境に合わせてランドマーク、ライントレース、SLAMを組み合わせて走行する「Hybrid SLAM」の開発も行い、汎用性を追求する。これは世界的にも珍しい技術で、特許も申請している。
―― 中期的なキャリロ事業の見通しや目標は。
笠置 物流の自動化に関するニーズの高まりを感じている。導入企業の業種の幅も広がっており、これまでメーンであった倉庫や工場に加えて、ホテル・旅館、病院、商業施設などの屋内搬送ニーズへの対応も増やしていきたい。25年の大阪万博に向け、港湾における物流でのニーズも増加するとみており、関西を含めた全国にサービスを展開していきたい。
(聞き手・有馬明日香記者)
(本紙2020年10月29日号9面 掲載)