電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第393回

I-PEX(株) 代表取締役社長 土山隆治氏


精密技術で高付加価値品展開
MEMSなど新事業創出加速

2020/9/25

I-PEX(株) 代表取締役社長 土山隆治氏
 I-PEX(株)(京都市伏見区桃山町根来12-4、Tel.075-611-7155)は、2020年8月1日付で第一精工(株)から社名を変更した。コア技術である精密加工をベースとした高付加価値コネクター、自動車部品をさらに進化させ、MEMSなどの新規事業を拡大させさらなる成長を目指す。代表取締役社長の土山隆治氏に聞いた。

―― 社名変更の背景と狙いから。
 土山 当社は1963年に精密金型メーカーとして創業し、精密加工技術をベースとしたコネクターや自動車部品、半導体封止装置などに事業展開してきた。創業50年を経て、数年前から「次の50年」に向けた新たな第一精工の在り方を模索し、理念の再構築を図ってきた。当社は様々な領域の製品を手がけているがゆえに、一言で何屋である」と言い表しにくい。新社名のI-PEXは「Innovative Product development&Engineering solutions eXpert」の略で、コア技術をベースに展開する当社の事業領域すべてを内包する。これまでコネクターのブランドネームとして使用していたが、それだけにとどまらず、当社が何者であるかを表現するコーポレートアイデンティティーとして確立させたいという思いが込められている。

―― 精密をキーワードに高機能化を志向する。
 土山 コネクターも自動車部品も、精密加工技術が生かせる高機能領域に特化し、汎用品は手がけないのが当社のビジネスモデルだ。例えばコネクターでは高周波、高速伝送技術を活用し、5Gなどをターゲットにした製品に注力する。また、自動車分野はスーパーエンプラなど難加工樹脂を用いた車載センサー、カスタムモジュールを手がけている。さらに、半導体封止装置で培った自動化技術を横展開し、様々な製造現場向けの自動化設備の受託製造を行っている。

―― 足元の業績と今後の見通しを。
 土山 20年12月期上期は、売上高が前年同期比4.3%減の243億3400万円、営業利益が同約9億円増の6億4000万円だった。新型コロナウイルスによる景況悪化により、自動車や産業機器関連は大きく落ち込んだ。一方、巣ごもり需要拡大でノートPCやスマートフォン向けコネクターは堅調で、高付加価値品の増加によって収益性は向上した。工場稼働率が好調だったこともあり、営業利益は増益を確保した。通期業績は売上高を前年度比4.7%減の515億円、営業利益を同26.2%増の19億円と予想する。下期に市況は回復に向かうが、本格回復は21年になるとみている。社内リソースを好調なコネクターに振り向け、高付加価値化を加速して収益向上を図る。

―― 生産設備部門の集約を計画している。
 土山 当社は生産拠点の60%を海外に置き、民生用の生産比率は中国、東南アジア、日本でそれぞれ約3分の1である。自動車関連製品は国内拠点で生産している。
 一方、生産設備部門は社内用設備部門をルーツとする関係でコネクターなどの生産拠点に併設されており、これまで3拠点に分散していた。これを集約するため、小郡工場(福岡県小郡市)の近郊の大学跡地を取得して「I-PEXキャンパス」を設立した。既存建屋の改装に加え、設備生産用の新棟を建設する。21年末の竣工予定で、22年春に稼働する。内製および外販生産設備の開発・設計・生産機能を集約して効率化するとともに、当社のコア技術である精密の精神を国内外の技術者に伝達する教育機能も持たせる予定だ。

―― 新規事業に関する取り組みは。
 土山 既存製品での新領域への進出や、新規事業創出を図っている。既存製品では医療機器や航空機部品など、新領域の開拓が挙げられる。例えば航空機部品では、自動車部品製造技術を応用したエンジン内機構部品の開発がある。また、新規事業としてMEMSの製品化を進めている。ロボット向けの静電容量型トルクセンサーを販売しているほか、食品の品質管理や空間上の臭気検知などに活用可能な匂いセンサーを開発し、サンプル提供を行っている。ほかにも複数の開発案件を進め、顧客と実証実験を行っている。MEMS事業は将来的な拡大に期待を寄せており、全社売上高の10%程度の規模を目指したい。
 さらに、モノづくりだけでなく「コト」ビジネスの創出も目指している。コネクターなどの製造で培ったシミュレーションや評価技術を活用した受託サービスの事業化を図る。I-PEXキャンパスは、こうした新規ビジネスを生み出す場としても活用したい。


(聞き手・中村剛記者)
(本紙2020年9月24日号1面 掲載)

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