電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第389回

旭化成エレクトロニクス(株) 代表取締役社長 本多英司氏


25年度に売上高1.5倍へ
光センサー基軸に新事業開拓

2020/8/28

旭化成エレクトロニクス(株) 代表取締役社長 本多英司氏
 旭化成グループで半導体事業を手がける旭化成エレクトロニクス(株)(東京都千代田区有楽町1-1-2、Tel.03-6699-3008)は、存在感のあるアナログICや独創的な化合物半導体技術をてこに新たな事業領域を拡大中だ。スマートフォン(スマホ)や車載向けでハイエンドを志向し、高付加価値化も追求する。光センサーなどの新領域も積極的に取り込み、第3の柱へと育成する。半導体で2025年度には現在の約1.5倍の売上規模を目指す。本多英司社長に今後の事業展開を聞いた。

―― 足元の市況ならびに20年度下期の展望から。
 本多 スマホやクルマ向けを中心に、コロナ禍の影響で全般的には低調だ。そのなかで車載向けの一部では、重要部品などを中心に在庫を多めに手当てする動きもある。一方、医療機器やロボット向けなど産業機器用途の製品は好調に推移している。
 7~8月を底に受注の回復を期待している。新型コロナの影響がこれ以上悪化しなければ、下期からの業績反転を見込む。上期の落ち込み分もあるので、下期に頑張ったとしても20年度通期売上高では前年度比横ばいとみている。ただ、当社はハイエンド品に強みを持っているため、収益面での悪影響を緩和できるかもしれない。

―― 現在の主力製品を教えて下さい。
 本多 大きくスマホと車載オーディオ向けを中心に展開する。スマホ向けでは電子コンパス、カメラモジュールのオートフォーカスや手ぶれ補正用磁気センサーが代表製品だ。車載オーディオ向けでは高精度A/D・D/Aコンバーター、ハンズフリー向けの音声処理DSP内蔵LSI、高音質を実現するノイズキャンセラーなど、高級オーディオ向けが得意だ。スマホ向けが3割、車載が3割、残りが民生や産業機器向けなどだ。

―― 車載デバイスに注力しています。
 本多 現状、デバイスベースの事業が主流だが、今後はお客様に最適なソリューションとしてハード・ソフト両面から提供できる新たなビジネスモデルも検討中だ。また、HVAC(空調)用のCO2センサーモジュールに注力しており、アルコールセンサーモジュールにも展開し、今後の事業拡大を見込んでいる。

―― UV-LEDも強化中です。
 本多 もともと水の殺菌を目的に事業化を目指してきたが、ここにきて大きな需要が見えてきた。水の殺菌は、水を使用するポイント(POU)で効率よく殺菌できる仕組みを開発し、浄水器やウオーターサーバー向けに、デバイス単体のほか殺菌モジュールとしてソリューション展開を強化中だ。
 最近、この技術は新型コロナの不活化でも注目され、特に当社製品の発光波長(265nm)が効果的で、表面に付着したウイルスの不活化に期待できる。現在強い引き合いをいただいており、年末時の生産は昨年比で倍以上になる計画だ。

―― 中長期的な電子部品事業の売上展望は。
 本多 25年度の電子部品全体の売上高として、19年度比1.5倍程度まで拡大したい。このうち、スマホは5G対応やカメラの高精度化などを背景に年率約5%の市場拡大が期待できる。カメラモジュール用や5G向け水晶発振器用デバイスを伸ばす。スマホでは25年度に同1.3倍まで増収したい。車載もEVや自動運転化が牽引し、先端市場は同10%以上の成長を見込む。電流センサーやミリ波レーダー関連品を伸ばす。車載では25年度に同1.5倍以上の増収を目指す。
 ガスセンサー製品はキャビン内の車載用途(CO2やアルコールセンサー)で25年には同5倍の事業拡大を目指す。また、昨今のコロナ対策として「3密」を可視化するために、CO2センサーと画像処理技術を組み合わせた実証実験が進んでおり、こうした製品も今後期待できる。このガスセンサーを中心に、光センシング技術などの製品群を第3の柱として育成・強化する。市場のトレンドを先取りしながら積極的に動く。

―― 20年度以降の設備投資の考え方について。
 本多 ガスセンサー関連を中心に積極的に投資を拡大する。生産設備の増強や開発費向けでも年間十数億円を継続する。既存ラインでは、生産効率を向上させることで2倍程度までの需要拡大に対応できる。さらに旺盛な需要となった場合には外部委託も検討する。

―― M&Aも機動的に行っていますね。
 本多 当社の技術ならびにマーケティングシナジーの相乗効果が発揮できることが事業買収の基本的な考え方だ。ガスセンサーモジュールメーカーのSenseair社の買収にみるように、当社の化合物半導体のLED/PDのデバイス技術と、彼らのモジュール設計技術を融合することで、いち早く車載向け高精度ガスセンサーの市場投入が可能になった。


(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2020年8月27日号1面 掲載)

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