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第377回

日本メクトロン(株) 副社長執行役員 藤原敬三氏


車載・医療など高付加価値へシフト
5G/データセンター投資に期待

2020/6/5

日本メクトロン(株) 副社長執行役員 藤原敬三氏
 日本メクトロン(株)(東京都港区芝大門1-12-15、Tel.03-3438-3604)は、フレキシブルプリント配線板(FPC)の分野で世界トップクラス、国内では最大のプリント回路カンパニーとなっている。2020年3月期の売り上げは2831億円。ピークの16年3月期に比べればかなり減少しているが、車載向け、医療向けなどの高付加価値品拡大を進めることで新たな事業展開を図っている。副社長執行役員の藤原敬三氏に今後の注力分野、事業の見通しなどを中心に話を伺った。

―― 新型コロナウイルスに世界が揺れています。
 藤原 世界大恐慌ともいうべき経済ショックが各国を襲っており、ここから抜け出していくには多大な努力を必要とするだろう。この間の世界経済を牽引してきた自動車産業が大きな打撃を受けており、エレクトロニクス分野にも少なからぬ影響がある。とりわけ、スマートフォンの20年出荷台数は2桁マイナスとの予想もあり、予断を許さない。当社も2月は中国工場が操業できず、影響を受けた。現在は回復しており、ほぼフル操業となっている。

―― 最近の受注状況は。
 藤原 少しずつ戻ってきている。当社は欧州にも拡大しており、ドイツ工場がスタートしているが、ハンガリー、チェコ、さらにはフランス、イギリスとコロナ禍が急速に進んだことで、今後の展開には不安が残っている。ただ、ここに来て引き合いも出始めており、工場操業ベースで言えば大きくぶれてはいない。

―― 5Gの状況をどう分析されますか。
 藤原 基地局に対する投資が遅れ気味だったが、中国ではチャイナモバイル、ユニコム、テレコムのビッグ3が3兆円近い投資を実行することをアナウンスした。また、アマゾン、グーグル、アップル、フェイスブック、マイクロソフトなどのデータセンター投資も10兆円近くが計画されており、心強いと思っている。データセンターにはCPU、GPU、DRAM、NANDフラッシュメモリー、FPGAなど多くの半導体が使われるが、当然ながらプリント回路の数量も増えていく。この基地局およびデータセンターの整備と同時進行で、スマートフォンの5G高速版投入が加速されるのは間違いない。台数ベースでは厳しいが、高性能・高機能のフレキシブルプリント配線板も多く出ていくので、これには期待している。

―― 車載向けの見通しについては。
 藤原 新型コロナウイルスの影響で中国のEV一気加速がブレーキを踏まざるを得ない状況であり、これは懸念している。また米国でもEVの普及はあまり進んでいない。しかして、時代の流れはこうしたエコカーに加え、自動走行運転、コネクテッドカーという近未来車の登場を必要としている。IoTを基盤にしたスマートシティとつながる自動車文化が花開く時が来る。車載向けのフレキシブルプリント配線板はこれまでよりも応用分野が拡がっていく。まず、目前のEV化が進むなかで採用点数の拡大を狙っていく。しかもカスタマイズ対応が多くなってくる。こうした基板を作れるのは世界でも数社しかなく、当社にも出番が来たと考えている。

―― 医療分野の拡大を進めていますね。
 藤原 新型コロナウイルス問題で医療分野に世界の注目が集まっている。人工呼吸器はマイコン、ブラシレスDCモーター、そして多くの電子部品を搭載する高機能品であり、電子デバイスが活躍するところだ。これからはウイルスだけでなく、あらゆる検査機器、分析機器が増産されるだろう。リモート診療も始まると高精細な画像が必要になり、スマートグラスなども増えてくる。フレキシブルプリント配線板は医療に使われる電子デバイスの下地にどうしても必要な存在であり、堅調に増えていくことが予想される。メクトロンは数年間かけて大阪大学との共同開発で脳波センサーに注力している。この製品は大ブレークする可能性を秘めている。

―― 21年3月期の予想について。
 藤原 全世界でロックダウンが長期化したことで経済が止まってしまった。まずは民生レベルから回復してくることになるが、元の状態に戻すだけでも秋口まではかかってしまうだろう。当社も21年3月期の業績はかなり厳しいと予測している。中長期的な見通しとしては、売上高にはあまりこだわらない。それよりもまず、現時点での赤字から脱却していきたい。そしてユーザーに近いところにマルチ拠点を設け、その意味でのグローバリゼーションを達成していく考えだ。


(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2020年6月4日号1面 掲載)

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