電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第369回

㈱フジキン 代表取締役社長兼COO 野島新也氏


半導体業界向けバルブ・継手は絶好調
国内外増強し売上高1000億円

2020/4/10

㈱フジキン 代表取締役社長兼COO 野島新也氏
 ㈱フジキン(大阪市北区芝田1-4-8、Tel.06-6372-7141)は、バルブ・継手の精密ながれ(流体)制御機器の専業メーカーとして国内外に知られている。とりわけ、超精密バルブ機器と言われる製品は、宇宙ロケットをはじめ、原子力発電、海洋開発、半導体生産プロセス、オプト、ケミカル、バイオプラント、新エネルギーなどに欠かせないものとして多くのユーザーに愛されている。人気のテレビドラマ『下町ロケット』の撮影に万博記念つくば先端事業所が使われたことでも有名だ。代表取締役社長兼COOの野島新也氏に最近の状況について話を伺った。

―― 半導体業界向け超精密バルブ・継手ながれ(流体)制御機器は圧倒的なシェアを誇っていますね。
 野島 ありがたいことに、これらの製品はまさに世界ナンバーワンの品質を実現している。超微量のガスを正確にコントロールし、超微細なパーティクルをも極端に嫌う半導体製造工程においては、ウルトラピュアバルブが必須のものとなっている。
 私たちは、清浄度で世界最高クラスのウルトラスーパークリーンルームで生産していることを強みとしており、また、お客様のカスタムニーズに応えて様々な創り込みで優位性を保っている。

―― 最近は非常に引き合いが強いと聞きますが。
 野島 新型コロナウイルスの世界的な蔓延によって、あらゆる経済が減速している。しかし、半導体メーカーの設備投資意欲は依然として衰えていないと感じている。
 これを反映して、半導体業界向けバルブ・継手類の需要は旺盛であると思われ、当社も将来を見据えた増産体制に対応している。国内外の有力な半導体メーカーに出荷させていただいているが、最近では中国の国産メーカーからの引き合いもかなり出てきている。

―― 今後の設備投資の方向性について。
 野島 2019年につくば先端事業所の30周年を記念して8号棟の立ち上げを行った。延べ床面積5000m²の建屋だが、将来はこれを2倍に拡張する計画もある。
 海外ではベトナム工場が一大量産拠点となっており、この増強が重要だと考えている。工場は北部に2カ所あり、1カ所はフル操業、もう1カ所の工場では将来十分な拡張ができるように備えている。お客様のご要望にお応えするためには、国内外ともに迅速な工場立ち上げが重要であると考えている。

―― マーケティング戦略は。
 野島 常にグローバル展開を心がけている。米国、アジアが現状では最も重要であるが、今後は中国が台頭してくると見ており、きっちりとサポートしていきたい。また、将来的には人口大国であるインドは何らかのかたちで拡大してくると見ているが、まだ半導体の素地がほとんどない。これからの進展に期待したい。

―― 20年度の売り上げ見通しは。
 野島 19年度の売上高はフジキングループ全体で850億円程度だった。過去のピークでは920億円を達成したことがある。20年度は1000億円超を狙っていきたい。それだけの潜在需要は十分にあると思っている。重要なことは、お客様のニーズをきっちりとつかんで、常に先行した設備投資と開発投資で応えていくことだと考えている。

―― 生産現場におけるIoTの導入状況は。
 野島 もちろん重要だと思っている。AI、センサー、ロボットを駆使した次世代モノづくりは、フジキンにあっても大きな課題だ。すでに工程の中にセンサーを組み込んで、データ分析するなどの取り組みは始めている。もっと生産性を上げるためには、やはりIoTによる自動化がより一層必要になる。ライン自体が自己診断できる体制が近い将来に望まれている。

―― ところで、19年に超モノづくり部品大賞を受賞されましたね。
 野島 これは、モノづくり日本会議様および日刊工業新聞社様が主催するものであり、第16回を迎えているが、フジキンの超高圧液体水素適合バルブが「大賞」を受賞させていただいた。この製品は、JAXA様と共同研究を開始した宇宙ロケット用バルブ、大型ロケットへの燃料充填システムの技術をベースにして、水素ステーション向け超高圧水素ガス用バルブなどで蓄積した技術を使い、新技術を加えて開発した。今後、燃料電池車の普及拡大が進めば、当社の技術が十分にお応えできると考えている。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2020年4月9日号1面 掲載)

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