(株)ジーダット(東京都中央区湊1-1-12、Tel.03-6262-8400)は、アナログ、パワーデバイス、メモリー、イメージセンサー、LCDドライバーなどの半導体のカスタム設計にフォーカスしている。EDAソフトウエアの研究開発型カンパニーであり、この分野の自動化技術で世界の先頭を走っている。前身であるセイコーインスツル(株)のEDA事業部から分離独立した2004年の創立以来、80%を超える自己資本比率のもとで継続した事業に取り組んでいる。代表取締役社長の松尾和利氏に、同社の基本コンセプトと今後の展開を伺った。
―― お生まれは福岡の八幡ですね。
松尾 中学2年までを八幡で過ごし、その後直方に移り、鞍手高校を経て駒澤大学経済学部に進む。実は日本大学芸術学部に受かっており、芸人志望であったが、家族の希望もあり、まともな就職を考えた。大学卒業後は直方信用金庫で営業の仕事に携わる。どうしても、もう少し世界につながる広いステージに出たかった。そこでセイコー電子工業の大阪に入社することになる。28歳の時であった。その後、福岡の所長となり、大阪では西日本の営業トップまでいった。
―― ジーダットは特色あるEDAソフトウエアカンパニーですね。
松尾 世界を視野に入れた製品開発を行うとともに、世界中の優れたEDA企業と提携し、より価値のあるソリューションを提供している。海外販売では中国、上海、韓国、ソウル、台湾、新竹、米国西海岸などに販売代理店を置いて、日本同様の手厚いユーザーサポートを行っている。
―― 先ごろ社長に就任しましたが、抱負は。
松尾 「明るく、楽しく、元気よく」に尽きる。何しろ、芸人志望であったのだから、常に明朗快活で覇気のある営業が第一と考えている。この会社は、もともと風通しがよく、自由度も高い。このよい社風を私は今後も引き継いでいきたいと考えている。
―― ジーダットの最大の武器は何ですか。
松尾 従来強みとしている自動設計技術に加え、回路の性能・品質を確実に保証するために設計制約を反映させる「制約ドリブン設計手法」の開発に成功した。高度な設計支援はもちろん、設計レベルの全体的な向上に広く寄与している。そしてまた、フラットパネルディスプレーを含めて電子デバイス全体として、常にお客様ごとの特別仕様にカスタム対応していることが最大の武器と言ってよいだろう。
―― とりわけアナログ設計に強いですね。
松尾 電子機器や電子部品の設計・製造に不可欠なアナログ設計の自動化という難しい課題にずっと取り組んできた。現在当社の主力製品であるSXシリーズは、国内外で5000を超えるライセンスが稼働している。
―― 売り上げ目標は。
松尾 07年にJASDAQに株式上場したが、最近の株価は非常に良好に推移している。数年後には売上高倍増を目指していく。営業利益も10%を確保したい。そして現在の海外販売比率は10%くらいだが、これを30%以上に上げていきたい。もちろんターゲットは中国、そして米国がメーンになると思う。
―― 製品分野で強化を考えているのは。
松尾 やはりスマートフォン、IoT、サーバーがポイントになる。また車載も重要と思っている。EVなどの次世代自動車向けデバイスは非常に伸びる領域だ。電源コントロールに必要なパワー半導体の設計手法にさらに磨きをかけていきたい。そしてまた、LSIボードパッケージという領域についても今後切り拓いていきたいと考えている。
―― 半導体が活況な地域は次々と移っていきます。
松尾 そのとおりだ。かつては日本がトップシェアであった。その後、米国が巻き返し、台湾が大活況となり、メモリー上昇機運のなかで韓国勢が世界ランキングの上位を押さえてきた。そして今は中国に勢いがある。様々な問題があってもチャイナパワーは必ず伸びていくと思っている。ファーウェイに近い深センにR&Dセンターを設けることも視野に入れ、新しい代理店をアサインした。中国を重視しながらも、得意とする分野であるCMOSイメージセンサー、MEMSセンサー、そしてDRAMなどのメモリー周辺をきっちりと伸ばしていきたい。
(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2020年2月27日号1面 掲載)