電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第354回

(株)ソシオネクスト CEO 肥塚雅博氏


ASIC分野へ原点回帰
縦割り組織を解消、4月に新体制

2019/12/20

(株)ソシオネクスト CEO 肥塚雅博氏
 ㈱ソシオネクスト(横浜市港北区)の設立から4年半が経過した。富士通とパナソニックのSoC事業を統合して発足した新生ファブレス企業として、業界からの注目度も高いが、非上場企業ということもあり、ここまでの歩みはあまり業界内でも知られていないのが実情だ。初代会長の西口泰夫氏からバトンを受け継ぎ、2018年4月から会長兼CEOに就いた肥塚雅博氏に、これまでの歩みを振り返ってもらうとともに、今後の方向性について語ってもらった。

――CEOに就任してから1年半が経過しました。
 肥塚 富士通時代は経営戦略および半導体事業の担当として、当社の設立過程においても、リードインベスターの日本政策投資銀行などとの交渉を担当し、前会長の西口氏の招聘にも関係した。ソシオネクストという会社の設立をリードし、深く関わってきたこともあり、前会長の西口氏からバトンを引き継ぐこととなった。

――現在の事業規模は。
 肥塚 今年度(20年3月期)の売上高はおよそ1100億円を見込んでいる。設立当初の富士通とパナソニックの合算の事業規模を考えれば、確かに規模は縮小している。やはり、我々がSoC事業を展開していくなかで、事業の軸足が「ASSPなのか?ASICなのか?」という点について、ぶれてしまったことも低迷の大きな理由だと考えている。加えて、市場シェアが高いところの売り上げが落ちてしまったこと(市場規模が縮小)も大きく、いわば成長しないところにリソースを割いていた状況だった。

――この問題点に対する対応は。
 肥塚 ここ数年の落ち込みは組織体制が非効率であったことに起因することも多い。テレビやFA、ネットワークというかたちで、いわゆる縦割りの組織となっていたが、これを19年4月に抜本的に見直した。具体的には、市場アプリケーションごとのチームを設置し市場展開を積極的に進める一方で、技術開発部門は大括りにし、会社全体で技術・ノウハウを共有できる体制に変更した。

――事業の軸足に対する答えは。
 肥塚 ASSPは我々の事業領域として排除はしないし、拡大を期待しているが、ASSPに満足できない市場が確実に大きくなっているのは見逃してはならず、我々の成長機会はむしろそこにあると確信している。特に近年はGAFAに代表されるサービスプロバイダーなど、従来にはない新しいタイプの顧客が差別化のためのSoCを求める傾向が強くなっている。また、自動車分野でも同様のSoCの開発が活発だ。

――新しい分野・顧客を獲得するための手立ては。
 肥塚 当たり前の話かもしれないが、先端テクノロジーへの対応はしっかりと行っていきたい。16nm世代はすでに18年から量産を開始しており、7nmも量産を予定している。さらに、5nm世代を活用したSoCの開発も進めており、最先端技術に積極的に挑戦していこうと思っている。

――人員の増強などは。
 肥塚 現状グループの人員数は約2700人で、うち約2100人がエンジニアで構成されている。設立当初に比べて人員も増えている。特に米国とアジアの人員体制を重点的に補強している。組織体制の見直しなどを行いビジネス基盤は整えたので、今後は開発効率のアップと開発の競争力強化、グローバルオペレーションの整備を進めていく。海外顧客からの受注獲得のため、本社に海外との共同プロジェクトを設置したり、日本から海外へエンジニアを積極的に派遣するなど、グローバル化を進めていきたい。

――今年度の見通しは。
 肥塚 売り上げは横ばい状態が続いていたが、将来見込める売り上げの先行指標となる商談獲得金額は増加傾向にあり、今年度は1500億円を上回る水準を見込んでいる。海外顧客・案件が上昇していることは大きい。また、商談獲得金額ベースで18年度は海外案件が7割まで高まっており、19年度上期に限れば9割を超える水準となっている。また、テクノロジー別にみても、16nm以細の割合が過半を超えており、高付加価値領域での比重が高まっている。グローバル先端市場にアクセスできていることが商談獲得の拡大につながっている。

――最後に、IPO(新規上場)に対する考えを。
 肥塚 設立当初、「5年以内にIPO」を目標に掲げていたが、正直なところ仕切り直しとなっている。しかし、この1年間、グローバル市場での商談獲得の拡大など、非常に大きな手応えを感じており、ぜひ成し遂げていきたい。

(聞き手・副編集長 稲葉雅巳/清水聡記者)
(本紙2019年12月19日号1面 掲載)

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