パナソニック・タワージャズ セミコンダクター(株)(TPSCo、富山県魚津市東山800、Tel.0765-22-5521)は、パナソニック セミコンダクターソリューションズ(株)とイスラエルに本社を置く大手ファンドリー企業、タワーセミコンダクター(ブランド名:タワージャズ)との合弁会社として2014年に誕生した企業。IDMとファンドリーを組み合わせた独自の事業モデルを志向し、パナソニックが持っていた高品質なものづくり力に、タワージャズが技術革新とスピード感をミックスしたことで、事業運営は設立から5年経った今、大きな成長期に突入しようとしている。CEOを務めるガイ・エリストフ氏に現況と今後の見通しを聞いた。
―― 設立から丸5年が経過しました。これまでを振り返って。
エリストフ 設立から最初の3年間はIDMからファンドリーへの業態転換を図るという意味で、「転換期」にあったとみている。IDMとファンドリーは全く異なるビジネスモデルであり、従業員を含めて理解を得るのに相応の時間を要した。
ただ、その移行期を経て、現在は「ファンドリー企業として成長期に入った」と言える状況にある。
―― 足元の受託生産の状況は。
エリストフ パナソニック以外のサードパーティー向けの受託製造は足元で急激な成長を見せており、17年段階でパナソニック向けとサードパーティー向けの生産量(マスク換算)はイーブンになった。サードパーティーの企業数はすでに200社以上に達しており、18年も多数の新規顧客を獲得することができた。
足元では特に300mmラインの引き合いが好調で、本格的に増産投資を検討しなければならない時期に差し掛かっている。
―― 300mmラインの稼働を押し上げている分野は。
エリストフ 主要なものは、パワーマネジメントデバイス、無線通信に必要なRF-SOI(Silicon on Insulator)プロセス、CMOSイメージセンサー(CIS)の3つだ。いずれも我々が強みとする分野であり、特に直近ではRF―SOIプロセスが5G通信の本格商用化を受けて、需要が大きく拡大している。CISも民生用途だけでなく、車載や産業機器、医療分野での顧客も獲得が進んでおり、20年以降の稼働を支える大きなアプリケーションとして期待している。
―― 具体的な増産計画は。
エリストフ 魚津地区の300mmラインの生産能力は、月産30万マスクレイヤー以上のキャパシティーを有しており、需要動向に応じて増強していくことになる。
―― 3月にパナソニックとの契約の延長を発表しました。一部買取価格などが改定され、タワージャズにとってネガティブな契約内容にも見えます。
エリストフ ご指摘のとおり、タワージャズにとっては多少ネガティブに映るが、私が率いるTPSCoにとっては大口顧客の生産が継続するという意味で、十分にポジティブな内容だ。
また、現在実施しているコスト削減活動や300mmラインの稼働率アップ、サードパーティーからの受注拡大によって、さらなる改善を目指している。
―― 最後に19年の事業見通しについてお聞かせ下さい。
エリストフ 昨今のマクロ景気の鈍化を受けて、TPSCoの3工場のうち、新井と砺波は前年比でほぼ横ばいとなる見通しだが、魚津地区は300mmラインでの事業拡大に伴い、大幅に増加すると見込んでいる。
(聞き手・特別編集委員 泉谷渉/副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2019年6月13日号1面 掲載)