電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第273回

新電元工業(株) 電子デバイス事業本部長 西智昭氏


車載比率 中長期で50%目標
パワーMOSとモジュールが成長担う

2018/5/18

新電元工業(株) 電子デバイス事業本部長 西智昭氏
 新電元工業(株)(東京都千代田区大手町2-2-1、Tel.03-3279-4431)は、世界トップクラスの市場シェアを持つ整流ダイオードを主軸に、パワー半導体事業を展開している。中長期的視点では、ディスクリート製品だけでなく、IC製品やパワーモジュール製品の展開に力を入れていくほか、市場別では車載分野を最も重視する。電子デバイス事業本部長を務める西智昭執行役員に現況と今後の見通しを伺った。

―― まずは足元の事業概況から教えて下さい。
 西 デバイス事業は2017年度(18年3月期)期初時点では327億円(外部向け)を見込んでいたが、結果的には336億円と前年度比9%増となりそうだ。主要市場である白物家電、産業機器、車載向けすべてが好調で、17年度に関してはとりわけ産業機器向けから強いオーダーがあった。正直なところ、顧客要求についていくのがやっとで、一部で作りきれないところがあった。

―― 足元の受注環境は。
 西 白物向けは17年末~18年初頭にかけて「調整局面か」と思わせるところもあったが、足元では再び受注が上昇局面になっている。車載も計画どおりに受注を獲得しており、決して踊り場という感じではない。産業機器は引き続き絶好調だ。

―― 製品別では。
 西 当社のデバイス事業は整流ダイオードが主力製品だ。ただ、17年に関しては供給面の問題から、全体的な市場シェアは減少したと見ている。ただ、引き続き市場シェアトップグループに位置していると見ている。

―― 今後のデバイス事業の中長期戦略について。
 西 当社のデバイス事業は従来、家電向けの比率が大きかったが、近年は車載向けの比率が上昇しており、直近でも約40%まで達している。今後これを50%まで拡大していきたい。ご存知のとおり、車載製品は採用から量産に至るまで4~5年かかる分野であり、すぐには50%にまで到達することはないが、現在の採用状況から5年スパン程度で見れば、十分に可能だ。

―― 現在、車載向けの主力アプリケーションは。
 西 まず1つは整流ダイオードで、逆流防止用途に用いられられるもので、ECU保護を目的に搭載が増えている。また、サージ吸収ダイオードも主力製品の1つで、両製品ともに日系ティア1を中心に高いシェアを獲得できている。今後は既存のダイオード製品に加え、MOSFETとパワーモジュール製品が車載事業の成長ドライバーになると期待を寄せている。

―― パワーモジュールの現況は。
 西 現在、産業機器と車載向けに製品を展開している。競合の大手パワー半導体メーカーもパワーモジュールに力を入れるなか、後発メーカーの我々としてはカスタム設計に特色を持たせて、他社との差別化を図っている。

―― 供給体制の整備について。
 西 17年度は車載および産業機器向けのダイオード製品のラインが逼迫したため、フィリピン工場の後工程ラインを増強した。製品によっては生産能力を従来の3倍以上に増やしたものもある。車載製品はこれまで国内生産が主体であったが、今後は海外での生産も増やしていく。
 モジュール製品は、タイ工場で新ラインの立ち上げなどを進めた。国内拠点は秋田が車載と民生向け双方を手がけているが、今後は車載中心のライン編成に切り替えていき、民生製品はタイで生産するかたちにしていく。

―― 前工程の増強は。
 西 17年度に東根のIC製品を生産する6インチラインの増強を行った。また、ダイオードの前工程を手がける秋田でも製造設備の入れ替えなどを通じて生産性向上を図った。ただ、今後は前工程に関してはすべて自社工場での増強ではなく、外部リソースも活用しながら供給能力を高めていきたい。特に今後伸びが期待されるMOSFETに関しては積極的に外部ファンドリーを活用していくことになるだろう。

―― 最後に今後の中長期的な売り上げ展望を。
 西 車載比率50%を目指す際のデバイス事業の売り上げ規模として、500億円というのが1つの目安となってくる。あくまでも主力事業はダイオードであるが、売り上げ拡大の役割を担うのは、MOSFETやパワーモジュール製品によるところが強く、これら重点分野の伸びが今後の目標達成のカギを握ってくるだろう。

(聞き手・副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2018年5月17日号3面 掲載)

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