3月29日付で閉店するソウルのあるマクドナルド(写真右側2階)
韓国マクドナルド(以下、マクドナルド)の成長が、著しく鈍化している。同社は、韓国の主要商圏における店舗を立て続けに閉鎖しており、ソウル市内の学生・若者の街として有名な新村(シンチョン)にある「新村店」も4月に閉店することを決めた。同店は、1998年の営業開始から20年の歴史に幕を下ろすことになった。
同社は新村店だけでなく、ソウル大学校入口店、舎唐店、釜山西面店、龍仁ダンデ店なども3~4月にかけて閉店している。これにより、ファストフードの主な消費層である10~20代の若者が集まるエリアで撤退が相次ぐことになる。
韓国の関連業界では、マクドナルドのこうした動きについて、賃料の上昇と商圏の変化、政府による最低賃金の引き上げの余波などが主因と分析している。
マクドナルド側は「店舗は10~20年単位で賃貸契約を更新するため、長期的な観点から競争力が落ちると予想される店舗を順次閉店していく」と説明している。
マクドナルドは88年、ソウル江南に第1号店をオープンし、これを皮切りに韓国に上陸した。当初数年間の成長は遅かったが、90年代半ばから爆発的な成長を続けた。新村店は、韓国のマクドナルド成長期のシンボル的な役割を果たした店である。ソウル地下鉄2号線の新村駅3番出口前に位置する同店は、開店と同時に大学生の憩いの場として知れ渡った。特に、新村でマクドナルドのハンバーガーを食べることは、当時の若者層文化のステータスでもあった。マクドナルドは、新村店の成功を足がかりとして、大学商圏へ戦略的に進出を続けた結果、韓国で最もポピュラーなハンバーガーブランドに成長した。
主要店舗の閉店は、賃料の上昇が大きく作用したようだ。マクドナルドは、10~20年の長期で賃貸契約をする。これは、商圏の分析を徹底的に行い、周辺の流行に流されず、安定的な経営を貫くという原則に基づいている。同社は今回、新村店の契約更新を予定していたが、ビル主が相場より高すぎる賃料を提示したため、同社は営業を継続することが難しいと判断したと言われている。ソウル大学校入口店や釜山西面店なども、同様の理由で閉店を決めたと推測される。
また、韓国政府による最低賃金の引き上げも影響した。韓国小売業の専門アナリストは「ハンバーガー店は1店あたり40~100人を雇用するが、最低賃金の引き上げは経営上、負担になりかねない」とコメントする。3~4月に閉店するマクドナルド店舗はすべて直営店だが、同社の直営店の割合は70%を上回っている。
マクドナルドは現在、韓国全土で448店を営業している。2000年ごろは毎年40~50店増えたものの、ここ数年の出店ペースは顕著に落ちており、16年は2店、17年は11店の純増にとどまった。前述のアナリストは「マクドナルドは収益追求型に方向転換を試みている」と分析する。
さらに、消費層が変わったことも、同社の戦略転換の理由であろう。過去、ハンバーガーといえば、大学生や中高生の特別なメニューであったが、いまやこれに代わる商品は多い。手作りハンバーガーをはじめ、イタリア式のピザ、メキシカンなど、ソウル市内はすでに飽和状態となっており、従来の10~20代顧客がファストフードから離れている。
特に、マクドナルドの主要顧客層が家族単位となり、自動車で移動する層に移りつつあることも、同社が主要商圏から撤退する原因といえよう。