百貨店がスーパーマーケットに代わる。にわかに信じ難いが、これが現実に起こった。時代と言ってしまえばそれまでだが、それにしても、である。こうした流れは小売業界全体で徐々に起きており、まさに業界内のサバイバル時代が本格化してきた様相だ。
11月22日、JR浦和駅の東口にある「浦和パルコ」に埼玉地盤のスーパーマーケット「ヤオコー」がオープンした。これだけを聞けば普通のことだが、このヤオコーは百貨店の大手「大丸」の跡地に出店したというのだから驚いた。大丸は地下の食品フロアを担う核テナントとして、浦和パルコが開業した2007年10月から営業していた。だが、開業以来赤字が続いたこと、近隣に「アトレ浦和」ができたことなどにより、さらに収益が悪化し、結果的に17年7月末をもって閉店していた。この跡地に何のテナントが入るのかと、個人的に注目していたが、まさかヤオコーが出店するとは、思っていなかった。
ヤオコーは素晴らしいスーパーマーケットだし、埼玉県川越市に本社を構える地元企業であり、県内での認知度も高い。「ららぽーと富士見」や「熊谷ニットーモール」、「ワカバウォーク」といったショッピングセンターをはじめとする商業施設にも出店している。こうした実績が出店に至った経緯かもしれないが、百貨店がスーパーマーケットに代わる、そのことにはいささか驚いたというのが率直な感想である。
小売業界全体を見渡してみても、テナントに限らず、“○○に代わって○○”という事例は増加している。例えばドラッグストア。最近では食品を取り扱う店も増え、こうした食品ドラッグストアは軒並み好調だと聞く。少なからずこの影響を受けているのがスーパーマーケットで、これまでの好調ぶりにブレーキがかかりつつある。ドラッグストアで食品を買うことが、消費者の選択肢に定着してきたのだろう。個人的に、スーパーマーケットに代わってドラッグストアという流れは、ますます加速していくと思っている。
個人的には、“ヒトに代わってAI”という変化球も投じておきたい。これだけは現実になってほしくないという思いはあるが、技術の進歩によって、そうなる日も近づいている気がする。ショッピングセンターには、AI機能を持ったインフォメーションボードの設置、案内や接客ロボットまで登場している。まだまだ実験段階ではあるが、注目しておきたい事柄のひとつである。
○○が○○に代わる。時代の変化によって支持されるものは変わるし、変わって当然だ。激しさを増す小売業界の競争において、これからもこのような事例は出てくるだろう。