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第246回

(株)ディスコ 執行役員 製造本部長 阿部直樹氏


装置生産能力を1.5倍に
部材を内製、自動化も促進

2017/11/2

(株)ディスコ 執行役員 製造本部長 阿部直樹氏
 (株)ディスコ(東京都大田区大森北2-13-11、Tel.03-4590-1111)は、ダイサーやグラインダーといった精密加工装置の主力製造拠点、桑畑工場(広島県呉市)に新棟「Cゾーン」の建設を進めている。足元の需要が拡大していることから、茅野工場(長野県茅野市)で新たに装置の生産を開始することに加え、部材の内製化や自動化にも余念がない。執行役員で製造本部長の阿部直樹氏に話を聞いた。

―― 精密加工装置の需要が急増している。
 阿部 2017年4月から需要が急増し、第1四半期の出荷は前年同期比で倍増した。需要のピークに対応するため、国内外の拠点から延べ146人の社員を桑畑工場に派遣し、生産支援を行った。夏以降に需要はピークアウトしたが、依然としてフル稼働の状態が続いている。
 例年、装置の需要は第1四半期に集中し、その後は落ち着くのがパターンだが、17年は年末から再び需要が立ち上がる気配があり、年度内に2度目のピークがあると予想される。ただ、今後需要が高水準で推移しても生産は原則内部の支援者でカバーし、技術の蓄積を図る方針だ。将来に向けた新入社員の採用拡大にも注力している。

―― 装置部材の内製化を推進している。
 阿部 装置の部材と製造過程で用いる消耗品の両方で内製化を推進しており、現状の内製化率は10%程度だ。もともと外部の汎用品では当社が求める仕様を実現できなかった、エアースピンドルやチャック軸といった機械加工部品の内製からスタートした。その後、装置の枠組みであるアルミフレームやハーネス、チューブ切断工程などに内製を拡大している。部材内製用の装置や補助機器も自社で開発・製造しており、誰でも高効率に内製できる。部材コストの圧縮や在庫リスクの大幅な抑制に加え、装置需要の谷間に内製に注力することで労力の調整にも効果がある。新たな部材の内製化も複数検討しており、メリットがあれば積極的に取り組んでいく。

―― 茅野工場で装置生産を開始する。
 阿部 18年4月から生産開始を予定しており、まずは短納期でシンプルなマニュアルダイサーから生産する。これまで桑畑工場のみだった装置の生産を2工場体制にすることで、災害リスクの低減を図る。生産能力はマニュアルダイサー換算で約1.5倍になる見込みだ。生産する品種を順次拡大するとともに、部材の内製も行う。将来的には桑畑と茅野の生産比率を50対50にする計画だ。

―― 精密加工ツールでは生産の自動化を進めている。
桑畑工場全景(手前からA、Bゾーンと建設中のCゾーン)
桑畑工場全景
(手前からA、Bゾーンと建設中のCゾーン)
 阿部 桑畑工場の既存棟であるAゾーン、Bゾーンにある精密加工ツール生産ラインは、工程の大半を自動化している。ただ、組み換えや最終検査など、一部に人の手を要する工程がある。建設中のCゾーンには精密加工ツールの完全自動化ラインを導入する予定だ。19年1月の稼働予定で、工場全体の精密加工ツール生産能力は約1.5倍となる。装置は顧客ごとの詳細なニーズ対応が必要なため完全自動化は難しいが、部品などの個別工程において取り組んでいく。

―― 自社開発ロボットを活用している。
 阿部 自動搬送車(AGV)を開発・製造して導入を進めている。倉庫における部品受け入れや、エアースピンドルの生産フロアから装置製造フロアへの搬送に利用している。エアースピンドルの搬送はエレベーターと連動しており、夜間に自動で搬送を行える。また、装置用ハーネス製造工程では、生産支援に開発した小型ロボットを活用している。ほかの工程でも実証を行っており、順次導入していく。工場の生産活動においてロスとなる移動の根絶に向けて活用する。

―― 装置業界で課題となっている部材調達への対応は。
 阿部 当社はサプライヤーと一体となって将来の予測を含めた需給調整を行っており、現状の装置需要増大への対応はできている。要素部材については当社側で確保しておき、サプライヤーに提供して部品を製造してもらうといった取り組みも行っている。

―― 桑畑工場の将来像は。
 阿部 桑畑工場は茅野工場の稼働後も装置事業の主力製造拠点であり、部材内製や自動化などの技術を開発するマザー工場として重要な役割を担っていく。ただ、当社は現場からの課題解決・改善の取り組みを積極的に推進しており、将来的には茅野工場からも部材の内製や自動化に関する成果が生まれてくるだろう。桑畑、茅野の両工場が互いに切磋琢磨することで、さらに製造力を強化できる体制を目指していく。

(聞き手・中村剛記者)
(本紙2017年11月2日号9面 掲載)

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