半導体製造装置用ヒーターユニットなどを手がけるワッティー(株)(東京都品川区西五反田7-18-2、Tel.03-3779-1001)は、2017年に創業50周年を迎える。防災機器の卸業務から事業をスタートし、その後半導体製造装置向けの機器製造事業にも進出。近年ではALD(Atomics Layer Deposition)装置も製品化し、装置メーカーとしての顔も持つようになるなど業容を広げている。創業50周年という節目を迎え、新たな飛躍の一歩を踏み出す同社の今後について、創業者で代表取締役を務める清水美知雄氏、取締役社長を務める菅波希衣子氏に話を聞いた。
―― 今年で創業50周年を迎えます。
清水 私が29歳の時に創業し、その後防災機器の卸業務から会社をスタートさせた。当時は代理店販売が非常に強い時代でもあり、メーカーからなかなか卸してもらえない苦労があった。それから97年に現在の熱システム事業部の前身である製造子会社を設立し、半導体製造装置分野に進出した。さらに、99年にはセンサ事業部を立ち上げ、現在の商社機能とあわせて、現在の事業形態が完成した。07年には社名を京浜測器から現在のワッティーに変更し、今年でちょうど丸10年を迎えたところだ。
―― 7月には50周年の記念行事も行いました。
菅波 50年という長い期間会社をやってこれたのも、社員とその社員の家族の方々がいてくれたからこそです。ですので、50周年イベントは社員だけでなく、ご家族の方々にも来てもらい、日ごろの感謝を伝えました。私たちが目指す会社の理想像として、子供が父親、母親が勤めている会社に入りたいと思ってもらえるような企業になることを指針の1つに掲げており、家族に働く姿勢を見てもらうことが非常に大事だと思っています。
―― 足元の事業の概況を教えて下さい。主力の熱システム事業部は。
菅波 17年度(17年12月期)は売上高で前年度比2割増と非常に高い目標を設定しました。前期の16年度はスポット的な需要が多く、前年度比3割増と非常に高い伸びを示したこともあり、それをさらに上回るのは容易なことではないだろうなと思っていました。しかし、半導体設備投資の拡大に伴い、私たちの顧客である製造装置メーカーからの注文は増え続けている状況で、この2割増という目標も超えることになりそうです。
―― これだけ活況が続くと、部材不足などの問題は。
清水 我々も状況は同じで、原材料の不足や人員不足に直面している。当社は相模原事業所で半導体製造装置用ヒーターユニットなどを生産しているが、神奈川県内は人員確保が容易ではない。本来は即戦力となるような技術系を採用していきたいが、なかなか思うように人員を拡充できていない。原材料の不足も深刻で、これに加えて我々の協力会社でも生産能力が足りておらず、受注残が積み上がってしまっている状況だ。そのため、一部で納期遅れを起こして顧客に迷惑をかけていると同時に、今期に計上見込みであったものの一部が期をまたいでしまうことになりそうだ。
―― 半導体設備投資は来年以降も高水準が続きそうです。能力の増強などは。
菅波 相模原事業所、および同じ相模原市にある技術研究所で生産能力の増強を進めています。技術研究所では電気炉の増設工事を進めており、12月ごろをめどに稼働を開始する見通しです。加えて、今回、仙台に新工場を設立することを決めました。土地面積1865m²、床面積969m²の土地・建物を取得し、18年3月の操業開始に向けて準備を進めているところです。新事業所では半導体製造装置ガス配管製作などを行う予定で、顧客に近いところで生産を行うことで、リードタイムの短縮につながるなど大きなメリットを得られると期待しています。
―― 仙台進出の経緯は。
菅波 仙台事業所を新たに開設するにあたって非常に大きかったのが、社員の方から東北地域に生産拠点を構えたいという声が出てきたことです。現在、当社は事業部単位で独立採算性を採っており、こうした申し出が社員の方から出てきたことを嬉しく思っています。
―― ALD装置も手がけています。
清水 新規事業の一環として、15年初頭から開発用ALD装置事業に参入した。ALDは原子レベルで成膜できることから、微細構造にも高い均一性で対応でき、CVDの置き換え技術として半導体製造工程を中心に需要が拡大している。長年培ってきた熱制御技術やキャリアガス/プロセスガスなどの制御技術を組み合わせることで、ALDの装置化を実現した。さらに、これと並行して、受託成膜サービスも開始した。足元では当初想定を上回る見通しで依頼が来ている。
―― 今後の展開は。
清水 受託成膜サービスを行いつつ、装置販売に関しては新型機を投入し、さらなる需要の掘り起こしに力を入れる。ユーザー層として、企業の研究開発部門や大学などの研究機関を想定しているが、大学などでは予算の関係上、ALD装置の購入になかなか結びつかないケースもあったようで、新モデルの発売を機に、顧客層の拡大を狙っていく。年明け以降、本格的な販売活動を行っていく計画で、初年度に3台前後の販売を目指す。また、この一環として山形大学と協業を図っていく予定で、産官学を軸とした事業開発に力を入れていくつもりだ。
―― センサ事業部の状況は。
菅波 17年12月期も前年度比でプラス成長を見込んでおり、着実に事業が拡大しています。現在は車載とIoT分野での事業展開に注力しており、海外市場にも目を向けて需要の掘り起こしを行っているところです。熱システム事業部は国内顧客を中心に展開していますが、センサ事業部については、海外顧客からの受注獲得も積極的に進めていきたいと思っています。
―― 最後に今後に向けての抱負を聞かせて下さい。
清水 中期目標として、20年度に売上高130億円の達成を目指した事業展開を進めている。現在、商社部門の売り上げ比率がまだ高いが、メーカー2部門の売り上げを今後伸ばしていくことでこれを達成したい。これにはより一層客先ニーズに応える開発志向を高めることが重要で、全社一丸となって技術開発力の強化に努めていく。そして、今まで以上に社員が働きやすい会社にすることを大事にしていきたい。ただし、社員の思いどおりになるだけでは駄目で、このバランスをしっかりと取っていきたい。