Tianma Japan(株)(TMJ、川崎市幸区鹿島田1-1-2、Tel.044-330-9933)は、2017年7月1日付でNLTテクノロジーから社名を変更し、中国のFPDメーカー天馬微電子の完全子会社として新たなスタートを切った。現在の取り組みや今後の事業展開について代表取締役執行役員社長の于徳樹氏に話を聞いた。
―― 完全子会社化によって従来と変わった点は。
于 天馬グループは民生用と産業用に液晶パネルを供給しており、TMJが産業用を手がけるPD(Professional Display)ビジネスユニットに属している点は、これまでと変わりない。だが、TMJも天馬グループの全製品を取り扱うようになり、商材がぐっと増えた。もともとTMJは産業用・医療用が主力だったが、天馬グループ全体の用途別構成比は医療用を含めた産業用と車載用が3分の1、残り3分の2は民生用だ。だから、日本の顧客に天馬グループのディスプレー製品を幅広く紹介し始めている。
―― 天馬グループは車載市場に強いですね。
于 天馬グループは17年に車載用パネル市場で10%に迫るシェアを獲得する勢いで、この3年は倍々で成長を遂げてきた。モノクロパネルの時代から戦略的にクラスターを優先しており、クラスター用では世界シェア上位3社に入る。現在はCID(Center Information Display)でもシェア拡大に取り組んでおり、日本のティア1でも近日中に受注が獲得できそうだ。
―― 民生用については。
于 日本のスマートフォン(スマホ)メーカーへの提案を強化している。日本のスマホメーカーは、海外の大手メーカーに比べて生産台数が少ないため、パネルの調達に困っているケースが多い。手応えを感じており、もっと営業提案を強めていきたい。
ちなみに、天馬グループは、狭額縁の全面パネルをアモルファスでもLTPSでも他社に先駆けて開発したため、応じきれないほどの受注をいただいている。アモルファスの受注も満杯の状況にあり、年後半には今よりもっと繁忙になる見通しだ。
―― 天馬グループは上海で5.5Gの有機EL工場を稼働させています。
于 現在はリジッド型有機ELのみを生産している。生産能力が小さいため、6Gでのスマホ用量産に向けた試作および車載・産業用のサンプル対応を中心に展開している。
先ごろ6G新工場を武漢に立ち上げたが、ここではフレキシブル型の量産も視野に入れている。4月にパネルの点灯を確認できており、立ち上げは早い。年末にはリジッド型の量産を開始できるとみているが、フレキシブル型の量産はその後になる予定だ。
―― 改めてTMJのミッションとは。
于 (1)天馬グループの全製品に関する日本市場の顧客サポートと販売増、(2)アモルファスの生産拠点として秋田工場の継続、(3)エンジニアの能力の高さを生かしたR&D機能だ。
(1)は前述のとおりで、(2)に関しては、小ロット多品種で採算の合う製品の生産を継続する。秋田工場では14~15年にタッチパネル技術PCAPの一貫生産体制を整え、16年には内製カラーフィルターラインを新設し、17年7月に稼働を始めるなど、継続して投資をしている。また、天馬グループの中国の工場に3~4割を生産委託し、この立ち上げや品質管理に人的サポートも行っており、グループ内でも評価が高い。
(3)については、天馬グループ内でR&Dの重複を避けるため、本社でテーマを決め、各拠点で役割を分担している。TMJの役割にはいくつかのテーマがあるが、有機EL材料系の評価はその1つのテーマだ。これに対応するため、秋田工場に真空蒸着装置を導入した。車載グレードに対応できるパネルの寿命と信頼性を年内に確保したいと考えている。
―― 業績見通しは。
于 16年度(12月期)は若干の減収だった。15年度にEOL品を売り切った反動に加え、一部だが為替の影響もあった。17年度は横ばい~微増を見込んでいるが、商品構成が変わる。天馬グループの製品構成比が上昇し、これが利益面でプラスに作用する見込みだ。
―― 今後の展開は。
于 外資系のFPDメーカーで、日本に当社ほどの大きな拠点を持ち、日本人が顧客対応できる企業はない。FPDメーカーの技術格差は年々縮まり、製品はどこも似ており、技術で選ばれることは少なくなった。TMJは、品質ではNEC時代から培ってきた実績があり、価格では自社工場のみで供給していた時代よりも努力ができる。サービスを顧客にもっと見えるようにして、選ばれる企業になりたい。
(聞き手・編集長 津村明宏)
(本紙2017年10月12日号1面 掲載)