電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第233回

住友化学(株) 常務執行役員 築森元氏


タッチセンサー 有機EL用に特化
カバーフィルム向け新素材を開発中

2017/8/4

住友化学(株) 常務執行役員 築森元氏
 住友化学(株)は、2011年に有機ELディスプレー向けタッチセンサーの製造を開始した。韓国子会社の東友ファインケム社で生産から販売を手がけている。現在はフィルムタイプのタッチセンサーの生産能力を増強しており、20年までに売上高を16年度比2倍に高める計画だ。製品特徴や戦略について、常務執行役員(有機EL事業化室、デバイス開発センター、情報電子化学業務室、情報電子化学品質保証室担当)の築森元氏に伺った。

―― 東友ファインケム社の概要から。
 築森 売上高は2000億円規模で、半導体向けなどの電子工業用高純度薬品、フォトレジスト、液晶・有機EL用偏光フィルム、カラーフィルター(CF)、有機EL用タッチセンサーの製造、販売を行っている。事業の内訳は、液晶向けをメーンとした偏光板事業が約4割を占め、ケミカルとタッチセンサー事業がそれぞれ約3割ずつという構成だ。

―― タッチセンサーは有機ELディスプレー向けにのみ提供していますね。
 築森 11年にタッチセンサーを事業化するにあたり、外付けのアドオンタイプが継続していけるかについて検討を重ねた。液晶ディスプレー向けのタッチセンサーは、インセル/オンセルの立ち上がりが思いのほか早く、エンベデッドの方向に進むと判断した。その点、有機ELは特にインセル化が困難で、アドオンタイプで展開していけると見通した。参入当初は全量が同一顧客向けであったが、現在は複数の顧客に製品を展開している。

―― タッチセンサーの生産能力を拡大しています。
 築森 17年3月に、フィルムタイプタッチセンサーの生産能力を、現行比3倍に増強すると発表した。18年1月から新体制で量産を開始する。
 タッチセンサーの製造ラインは5つあり、うち3ラインがガラス基板向けで、このうちの1ラインがガラスとフィルムの両方が製造可能な設備だ。2ラインがフィルム基板用で、すでに1ラインを増設済みだ。また今後、フィルムセンサーの生産が増えていくようであれば、さらなる増強も視野に入れていく考えだ。

―― 製品の特徴について。
 築森 当社は基材フィルム上に導電性材料をスパッタリングして、センサーパターンと引き出し線までを形成して提供している。枚葉で生産しており、メーンサイズは6~7型だ。
 フィルムの片面にX、Yセンサーを形成し、絶縁膜を介してブリッジ構造としている。これだと導電性が高く、性能も良い。標準品でL/S=20μmで、タッチセンサーの厚みもほぼフィルム基材の厚さそのもので薄い。
 基材についてはPETフィルムなどを使用しているが、現在増強を進めている新設備では、基材フィルムの多様性に対応可能なプロセスを採用する。これまではタッチセンサーに必要な光学特性を保持しつつ、その生産プロセスに耐えうる基材が必要だったが、新体制では「リタデーションが少なく、薄く、透過率が高く、収縮率が低いフィルム基材がいい」といった難しい要望にも応えられるようになるので、期待していただきたい。

―― 次の有機ELディスプレーの形状として、フォルダブルが検討されています。ITO電極では難しいと言われていますね。
 築森 たとえITOでも、成膜条件の工夫などで、フォルダブルは可能だと考えている。R2~2.5で想定しており、十分に対応できる。タッチセンサーだけの問題ではなく、フルスタックにした際にも課題があるため、常にお客様から実証結果をフィードバックしていただいている。また、その先のローラブル形状についても、ITOで可能ではないかと見ている。
 しかし、例えばもっと高透過であったり、全面指紋認証やフォースタッチにしたい、などのハイリクエストに応えるとなれば、ITO以外の素材を検討する必要があるだろう。

―― 車載用途におけるタッチセンサー市場についてはどう見ていますか。
 築森 視野にあるが、これまでと同じく、液晶向けはいずれエンベデッド化が進むため考えていない。有機ELディスプレーの搭載がどう進むか。その流れを見ているところだ。

―― 新製品の開発も進めています。
 築森 カバーガラスを代替するウィンドウフィルムを開発中だ。当社でポリマーから設計して新素材のフィルムを作り上げていく。
 例えばフォルダブルになった際、ウィンドウフィルム、タッチセンサー、ポラライザーやリターダーなどの偏光板をそれぞれ貼り合わせるよりも、より少ない枚数にすべく機能統合をした製品が望まれるだろう。まずは、それぞれ単体で提供を開始し、徐々にウィンドウフィルムをベースとして機能統合したような製品を提案していきたいと考えている。

(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2017年8月3日号6面 掲載)

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