訪日外国人観光客(インバウンド)の増加や、2020年の東京五輪開催などによるホテル開発の活況ぶりは、これまでもたくさん取り上げてきたし、様々なところで報道されている。この特需は17~18年度に開業ピークを迎え、それ以降は段々と落ち着いてくる見込みなのだが、同時にある問題が浮き彫りになってくる。それは、新設ホテルに淘汰された、いわゆる“古くなったホテルをどうするか問題”である。
ある大手ホテル事業者は以前から「このまま開発ラッシュが進めば、今後確実にオーバーホテル現象が起こる」と懸念していたが、その現象がまさに現実のものになりつつある。ショッピングセンターや駅ビルなどの各種商業施設であれば、例えばモノが売れなければ、コト消費によるサービス提供などで稼ぐことも可能かもしれないが、ホテルはそうもいかない。宿泊特化型ホテルであればなおさらである。また、競争激化による値引き合戦のようなケースになると、適切な利益を確保できず、経営が立ち行かなくなるところも出てくるであろう。
ホテルは、一般的には企業が敷地の所有から始まり、施設の建設~運営までを行うが、中には個人オーナーとして敷地や建物を所有する場合もある。古くなったホテルをリニューアルするにしても、かなり大きな投資が必要になり、簡単なことではない。都心部では個人オーナーは少ないかもしれないが、地方では割合が高かったりする。
先日、某ホテルオペレーターへ取材に行った時の話だ。その企業は、古くなったホテルをリブランドし、自分たちが保有するホテルブランドへ切り替え、マスターリースするなどして運営を行っている。実際、すでに数多くのホテルをリブランドしていて、オーナーからの評判も高いという。こうしたケースは個人的には賛成で、これからも増えていくのではないか、増えてほしいと思っている。
ホテル業界は今後変革を迎える
(写真は東京五輪後をチャンスと捉え、
事業拡大を狙うアパホテル)
古くなったホテルをそのままにしていても回復のめどは立たないし、だからといって、閉鎖して別の施設を建てるにしてもやはり大きな投資がかかる。であれば、資産の有効活用として、既存施設は活かしつつ、新たなホテルへと生まれ変わるリブランドという選択肢は、様々な面で良いのではないかと思っている。
日本を代表するホテルチェーンであるアパグループ代表の元谷外志雄氏も「18年あたりからオーバーホテル現象が始まり、東京五輪後はさらにオーバーホテルになるだろう。ホテルは常にリニューアルしなければならないが、これだけホテルが増えれば陳腐化して経営が難しくなるものも出てくる」とし、「こうした時に(ホテルを)買収して、事業を拡大するチャンスと捉えている」と話しており、オーバーホテル現象は、業界として避けては通れないという認識になっている。
流通・小売業界でも店舗が乱立するオーバーストアが叫ばれるが、ホテルも似た現象が起きている。ホテル業界はこうした問題にどう立ち向かい、解決し、どこが生き残るのか。今後の動向に注目していきたい。