三菱電機(株)(東京都千代田区丸の内2-7-3、Tel.03-3218-2111)の産業用ロボット事業が拡大を続けている。電機・電子分野で使用される組立用ロボットを中心に国内外で販売が拡大し、2016年度(17年3月期)も過去最高の業績を記録した。FAシステム事業本部 機器事業部 主席技監の小平紀生氏に話を伺った。
―― 16年度のロボット事業について。
小平 当社のロボット事業は近年、安定的に成長し毎年過去最高を更新しており、16年度もその勢いは継続。金額ベースでは前年度に比べ2桁%増、台数ベースでは20~30%伸長した。分野としては、当社が強みを持つ電機・電子分野で組立用途を中心に拡販したほか、電装化が進む車載関連分野でも販売を伸ばした。市場別では、中国の伸び率がもっとも大きく、国内や欧州なども堅調で、グローバル全体でロボットの需要が拡大している印象だ。
―― 生産体制は。
小平 ロボット製品は名古屋製作所(名古屋市東区)管内ですべて生産している。14年ごろに大規模な増強を図り、その後も適宜体制を整備することで、急な需要変動にも柔軟に対応できる体制を敷いている。ただ、それでも対応しきれないケースもあり、市場は今後も拡大傾向にあることから、さらなる増強についても検討を始めている。
―― 新製品について。
知能化技術を進化させた「MELFA FRシリーズ」
小平 3月末から「MELFA FRシリーズ」266機種の展開を開始した。当社はロボットの知能化ソリューションに長年取り組んでおり、セル生産のように多様で難易度の高い作業の自動化に強みを持つが、FRシリーズは力覚センサーの制御周期の短縮など知能化技術をさらに進化させ、より高度な作業の自動化も実現できる。加えて、FA統合ソリューション「e-F@ctory」対応により当社のFA製品との連携も強化し、工場のスマート化にも貢献できる。
―― そのほか特徴は。
小平 機能拡張オプション「MELFA SmartPlus」がある。コントローラーに専用カードを差し込むことで、新しい機能を簡単に追加することができるもので、ロボットアームの熱膨張を補正して位置精度を向上する機能やキャリブレーションの支援機能などを実装できる。これにより、違う工場で同じシステムを構築する際の調整が簡易に行える。今後、様々な機能を付帯したカードを順次ラインアップしていく予定で、最終的にはネットから機能を自由にダウンロードできるようなかたちにし、幅広いソリューションを提供できるようにしていく。
―― 開発面について。
小平 近年、中国製を中心に低価格なロボットが次々と市場に投入されているなか、当社としては先述のようなシステムとしての総合的な提案力を高めていく。もちろんロボット自体の性能を高めていく必要もある。そのためには「機械は機械、電子は電子」と区分けして考えるのではなく、機械と電子を一体で捉えるような取り組みが必要になってくると見ている。
当社も最近はセンサーメーカーや材料メーカーとのミーティングが増えており、ロボットに搭載するうえで足りない部分、逆にオーバースペックな部分などを積極的に提示している。もし新しい電子デバイスや材料などの提案があれば当社としては歓迎だ。
―― 今後の方向性を。
小平 ロボットの導入が進んでいるといわれる自動車や電機・電子分野でも、自動化できていない部分はまだまだある。また、中小企業向けのソリューションを拡大することも重要視しており、当社としては機能を強化したFRシリーズを活用して対応範囲の拡大に取り組む。加えて、システムインテグレーターの連携強化も国内外で積極的に進める考えだ。17年度はこうした取り組みを進めながら、様々な市場・用途を全方位で展開していき、産業用ロボット製品で2桁%の増収を達成したい。そして20年度までには16年度比2倍以上の事業規模に拡大していくことを目指す。
(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2017年5月11日号9面 掲載)