中国のジンコ・ソーラー(晶科能源、日本法人=東京都中央区京橋2-2-1、Tel.03-6262-6009)は、太陽電池(PV)メーカー大手の一角だ。事業規模を毎年拡大し、2015年にはモジュール生産能力で世界トップに躍り出た。日本市場では双日(株)や(株)NTTファシリティーズなどとの協業で拡販しているほか、家電量販店大手のヤマダ電機とも提携し、全国展開を図っている。副総裁 国際営業・マーケティングのジーナー・ミャオ(苗根)氏に話を聞いた。
―― 貴社の概要から。
ミャオ 06年に設立された結晶系PVメーカーだ。シリコンのインゴット、ウエハー、セル、モジュールまで一貫生産するワンストップサービスを提供する。用途は住宅、ソーラーファーム、商業施設、農地など様々だ。セールスオフィスを中国、日本、インド、北米、ドイツ、英国、スペイン、フランスなどに持つ。日本法人のジンコソーラージャパンは13年に設立した。東京と大阪にオフィスを持ち、従業員数は40人だ。
生産拠点は中国の上饒、海寧および新疆、南アフリカのヨハネスブルク、ポルトガルのリスボン、マレーシアのペナンにそれぞれ持つ。新疆がインゴット、ウエハー、上饒およびマレーシアがセル、パネル、ヨハネスブルクおよびリスボンがモジュールを生産している。上饒はマザー拠点である。生産能力は、インゴット・ウエハーが7GW、セルが4.5GW、モジュールが8GWだ。現状、新たな生産拠点を建設するプランはないが、生産能力は継続的に増強している。自社で太陽光発電所を保有してIPP事業を展開していたが、16年末にジンコ・パワーとして分社化した。同社が保有する太陽光発電所の出力は2GWだ。
―― 出荷実績は。
ミャオ 16年のモジュール出荷量は前年比48.9%増の6.7GWとなった。地域別では中国と北米が多く、それぞれ25%だ。残りが欧州、アジア太平洋地域で、日本は7%程度だ。売上高は前年比20.5%増の13億5000万元(1億9400万ドル)、粗利益率は18.1%となった。
17年はモジュール出荷量で16年比約30%増の8.5~9GWになると予測している。当社が躍進した背景には、高品質・信頼性、高い技術力、充実したローカルサービス、ブランド力などが挙げられる。
―― 事業拡大の背景は。
ミャオ シリコンのインゴット~モジュールまで一貫して生産している点が最大の強みだ。これにより低コスト化が可能で、例えば、モジュールのみを手がけるメーカーよりも製造コストを圧倒的に低くできる。また、工場の全自動化で人件費を抑えた。さらに、こうした一貫・高効率生産によって製品の高出力、高信頼性にもつながった。
―― 製品展開について。
ミャオ 単結晶、多結晶、高出力、両面ガラスモジュール、ハーフセル、ダブルセル、n型セル、PERC、PIDフリーなど様々な技術をラインアップし、顧客のあらゆるニーズに対応できる。例えば、限られた土地に設置する場合は高出力、砂漠などの過酷な環境下では両面ガラスモジュールを提案する。代表的な製品として、住宅用では単結晶の「Eagle Mono PERC」、産業用では多結晶の「Eagle iPlus」が挙げられる。前者はPERCの採用で最高出力310W、モジュール変換効率18.63%、後者は最高出力270W、モジュール変換効率16.50%にそれぞれ対応する。
―― 最近の大型プロジェクトは。
ミャオ 直近では、丸紅(株)らと協力してアブダビにメガソーラーを建設する計画を進めている。丸紅、ジンコ、アブダビ・ウォーター、アブダビ水電力局が共同出資する特別目的会社が出力1.17GWのメガソーラー発電所を建設・運営・維持するものだ。17年末に着工し、19年から稼働を開始する計画だ。期間は25年間を想定している。
北米ではIPPのspowerと1GWプロジェクトを推進した。16年末までにカリフォルニア州をはじめ米国の複数個所にメガソーラーを建設し、PVモジュールを供給した。
日本では大阪府岸和田市に出力1MWの水上設置型ソーラーファームを設置した。大和リースが設計・施工を担当し、当社がPVモジュールを供給して15年9月に完成した。
―― 日本市場に対して。
ミャオ FIT調達価格の低下、電力会社の接続容量制限などによって産業用は大きな伸びが期待できないが、住宅用は自家発電需要の増加で増えていく見込みだ。販売体制では双日と提携し、同社の販売網を活用している。NTTファシリティーズとは販売・EPCで提携している。また、ヤマダ電機とも販売契約を締結しており、今後は全国展開を図っていく。
(聞き手・東哲也記者)
(本紙2017年4月13日号7面 掲載)