2016年も終わりを迎えようとしているが、今年も、東急プラザ銀座、ニュウマン、セブンパークアリオ柏など大型で特徴ある商業施設が多数オープンした。最近のトレンドをふんだんに取り込み、いずれも人気を呼んでいるが、なぜか満足感に欠ける気もする。これは、単に自分が落ち着いた雰囲気のほっとするような施設が好きだからかもしれない。
その意味では16年にオープンした施設の中で印象に残ったのが、JR両国旧駅舎をリニューアルし、11月25日にオープンした商業施設「-両国-江戸NOREN」である。開発規模は2階建て延べ2900m²とそれほど大きくないが、建物、内装、出店テナントとも江戸情緒があり、相撲文化の両国にマッチした商業施設となっている。入り口を入ると館内前方には江戸の町屋を意識した吹き抜け空間が広がり、日本相撲協会監修による土俵が威厳を放つ光景は、江戸時代にタイムスリップした印象だ。それが不思議な懐かしさや安心感を与えているのであろう。
全長約500mにわたり展開する
岩本町・東神田ファミリーバザール
同様に岩本町・東神田で実施している「岩本町・東神田ファミリーバザール」も懐かしさを感じさせ、ほっとさせてくれる商業イベントだ。会社近くの靖国通りの裏通り沿いで実施されているのは知っていたものの、会場の隅々まで歩くとそのスケールの大きさに驚かされる。千代田区岩本町から東神田の靖国通りに沿った、昭和通りから清洲橋通りまでの裏通り沿い約500mの道路両脇を歩行者専用とし、店舗がずらっと軒を連ねているのだ。紳士服、婦人・子供服、日用雑貨寝具関係など合わせて約190店もの店舗が道路脇に出店しているため、その光景はなかなか壮観だ。
聞くところ岩本町界隈は、江戸時代に外堀の改修後に神田川が人工的に誕生し、その土手に沿って古着屋が多数出店した。それが繊維の街として知られる岩本町問屋街の原型となっているという。その後、売る商品も着物から洋服へと変わり第2次大戦後に大生産地に発展し、百貨店、専門店などに卸された。
このファミリーバザールは大量生産により流行遅れの品物や規格外れの商品が数多く出回るようになったため、それらを格安の値段で提供したのが始まりで、年2回の開催ですでに30年近くも続いている。売っているものもスーツ、コート、ジャケットからタオル、カバン、包丁、フライパン、傘、靴のほか爪切りや耳かきなどの小物まで、ありとあらゆるものが販売されている。
アウトドアのイベントであることや、繊維業全盛期の当時を彷彿とさせられるのも引き付けられる要因なのかもしれない。
最近では近代化した商業施設が多くなっているが、こういった商業施設に魅力を感じる自分としては、懐かしくもほっとする施設の開発に期待したいものだ。