ソニーセミコンダクタソリューションズ(株)(神奈川県厚木市旭町4-14-1)は、主力のイメージセンサーの需要が好調に推移している。4月の熊本地震では生産拠点に大きな被害を受けたが、2016年度のイメージセンサー売上高は前年度比3%増の4900億円と増収を計画している。中核となるモバイル分野を担当している統括部長の北岡敦司氏に現況や今後の展望を伺った。
―― モバイル分野のご担当ですね。
北岡 スマートフォン(スマホ)を中心にタブレット、パソコン、VR/AR製品向けを担当している。タブレットやパソコン向けは市場縮小によってイメージセンサーの需要も減少傾向にあるが、スマホ用は引き続き需要が旺盛だ。VR/AR向けはこれからの市場だが、1台あたり複数個搭載される可能性があり、搭載個所によって求められる機能が異なるケースが出てきそうで、今後に注目している。
―― スマホ向けの需要動向について。
北岡 16年前半のスマホ市場は通貨安などで新興国向けが想定を下回っていたが、一方で中国向けが想定以上に拡大している。インド市場も回復してきた。特にミドル価格帯の端末が伸びており、端末の平均価格も上昇した。
これに伴い、イメージセンサーに関しては、自撮り用フロントカメラの高画素化、メーンカメラの複眼化(デュアル化)などが進み、ボリュームが増えている。
―― 15年度の供給不足や先の熊本地震でシェアが低下したのでは。
北岡 確かに一時的に下がったが、現在は回復しつつある。シェア回復に向けて一時的に生産品目の画素数ラインアップを増やしたりもしたが、現在は「高付加価値品への特化」という戦略に再び舵を切っている。
ちなみに、スマホ用は市場全体の半分以上が1300万画素以上のセンサーを搭載しているが、当社はここで7~8割のシェアを獲得できている。
―― 17年の市場をどう見ていますか。
北岡 スマホの出荷台数は伸び率が低いだろうが、イメージセンサーの需要は引き続き伸びる。デュアルカメラの搭載率が上がるためで、1台あたりフロントカメラも合わせてイメージセンサーを3個搭載する機種がさらに増加する。
単純な高画素数の要求は多くないが、一方で、複数の画素を用いて機能を向上する技術トレンドに注目している。すでに画素ごとに取れる位相差を活用してオートフォーカス機能を向上させる取り組みなどが出てきているが、当社もこうしたスマホカメラの高機能化に貢献していく。これらの機能を実現するためにセンサー素子の微細化技術や、カラーフィルター部分の改良、画素情報を重ねて活用するうえでの補正技術などが重要になる。
また虹彩などの生体認証、3次元情報が取得できるDepth(奥行き)センシング、測距などができるイメージセンサーの開発にも注力していく。
―― 生産面の現状について。
北岡 足元の受注は好調で、現時点の投入計画は第1四半期業績発表時の月産7.3万枚より引き上げている。今後も投入を増やす可能性はあるが、その判断は17年度の需要動向を踏まえて判断したい。
(聞き手・編集長 津村明宏)
(本紙2016年12月1日号3面 掲載)