電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第178回

ルネサス エレクトロニクス(株) 新CEO 呉文精氏


成長軌道へ「オセロの隅」押さえる
M&A「時間を買う意味で不可欠」

2016/7/8

ルネサス エレクトロニクス(株) 新CEO 呉文精氏
 ルネサス エレクトロニクス(株)は6月28日付で、元日本電産副社長で、カルソニックカンセイでも社長を務めた呉文精氏を代表取締役社長兼CEOとして迎える新体制に移行した。作田元CEOが在任期間中に成し遂げた構造改革を経て、呉氏にはルネサスを再び成長軌道に乗せる大きな役割が期待されている。28日に行われた会見では、「私が持つ経営ノウハウを入れることでうまくいく。傲慢かもしれないが、それぐらいの自信がなければ、この職を引き受けていない」と語るなど、その姿には自信がみなぎる。同氏はこのほど電子デバイス産業新聞などの取材に応じた。内容は以下のとおり。

―― ここまでのルネサスの道のりをどう見ますか。
 呉 三菱電機、日立製作所、NECが一緒になって設立された間もないころは、良くも悪くも、すり合わせの会社であったと思う。それは半導体に限った話ではなく、家電もそうだ。ユーザーが求めるものを、安く、品質高く作ればよかったが、今はその事業モデルが通用しない。結果、開発・設計・製造をすべて自前でやることは武器ではなくなってしまった。そうしたなかで、作田元CEOが行った変革プランで事業領域を絞る、生産拠点を減らして固定費を下げることなどは大きな成果を上げることができたと思う。

―― 自身がルネサスにどういった付加価値をもたらすことができますか。
 呉 では何を武器に戦うのか、といえば会見のときも話したが、いくつかの「オセロの隅石」を押さえる必要があり、それはすでに社内にあると思っている。会見で「答えはすべて社内にある」と言ったのもそういう意味だ。そのオセロの隅石を戦略的に押さえていくことが重要だ。過去のルネサスはこの点がよくできていなかったと思う。これはある意味仕方がない部分であり、我々はようやく病院を「退院」したばかりだからだ。どうやって戦略分野を伸ばしていくのか、が自分の使命だ。

―― 具体的な数値目標などは。
 呉 定性的な成長戦略は今年の秋には出したい。数値的なものは年末ごろに出せればと思っているが、足元の円高や英国のユーロ離脱などもあり、少し時間がかかるかもしれない。

―― ルネサスはこれまで単品チップの供給から、キットなどのソリューション販売に力を入れてきました。それは今後も継承しますか。
 呉 やや個人的な意見になるが、圧倒的に強力なデバイスであれば、単品商売が一番良いし、それができるのであれば、それに越したことはない。インテル然り、ARM然りだ。しかし、そういうものがいつもあるわけではない。基本的にソリューション提供することは賛成だが、強いデバイスを作っていくことを忘れてはいけない。その延長線上にソリューションがあればいい。

―― 会見では、増収について前向きな発言もありました。
 呉 リスクを取れるぐらいの会社規模は維持していきたい。今後の車載分野などを考慮すれば、R&Dコストは増やしていく必要があるので、売り上げの絶対額としては増やしていきたい。R&Dについては今後、リソース確保の観点から、これを海外に求めていくことや、外部企業にアウトソーシングすることも真剣に考えていく必要がある。

―― M&Aに対する考え方については。
 呉 時間を買う意味では不可欠だと思う。企業経営がグローバルになっているかというと、ルネサスはまだそれになりえていない。そういう意味ではもっと外に出て行く必要がある。

―― 生産体制についての考え方は。
 呉 現在、6インチ工場は4つあるが、これはビジネス的には厳しいので、思い切ったことをすると思う。一方で、生産部門も先ほどの「オセロの隅石」になりうる可能性もあると思っており、すべてを自前主義でいくわけではないが、そこを明確化して、かつ磨いていきたい。

―― 設備投資も増やしていくという意味ですか。
 呉 そうだ。そのためには、営業利益率は少なくとも15%は確保しておきたい。ただ、設備投資もそうだが、まずは生産技術を磨くという意味で、エンジニアリング分野へのリソース投入を重点的に行っていきたい。

(本紙2016年7月7日号1面 掲載)

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