車載ディスプレー市場は、携帯電話向けやデジタルカメラ、タブレットPC向けなどが伸び悩むなか、2015年も前年比で2桁の成長率を記録し、市場が急拡大している。これまでセンターコンソールのセンターインフォメーションディスプレー(CID)を中心に成長してきた同市場だが、一部のミドルクラスや高級車を中心にインストルメントクラスターでの搭載も進んでおり、今後の成長を担う大きな牽引役として期待されている。車載ディスプレー市場でトップシェアを握る(株)ジャパンディスプレイの執行役員 車載ディスプレイ事業本部 本部長 月崎義幸氏にビジネスの現況や今後の成長戦略などについて伺った。
―― 15年の車載ディスプレー事業について。
月崎 15年における当社の車載ディスプレー事業は、前年に引き続き堅調に推移している。マーケットの成長率と同様、2桁の高成長を記録した。特にクラスター向けでの大型化、高精細化の進展が事業の拡大に寄与した。
従来のクラスター向けパネルは3~4インチが主流であったが、一部の車種ではより大型かつ高精細のパネル搭載が進んでいる。これにより、15年度は期初計画を上回る成長となった。
―― クラスター向けパネルの製品展開について。
月崎 当社では14年4月にクラスター向けに12.3型の異形状液晶モジュールを開発・市場投入した。当社が強みを持つIPS技術により高コントラストを活かした引き締まった黒を実現するとともに、12.3型の大画面ディスプレーで1000cd/m²の高輝度を実現している。
また、長方形という液晶パネルの常識をくつがえし、上部のコーナー部を切り落とした“異形状”により、インストルメントクラスター部のデザインの自由度を大幅に高めることを可能としている。同ディスプレーは、市販車モデルへの搭載がようやくスタートし、今後の成長が期待される。
―― センターコンソール向けディスプレーは。
月崎 OEMからは、可能な限りセンターコンソールにおけるメカニカルスイッチの搭載数を削減したいというニーズがある。そのため、CIDにはさらなる大型化、高精細化、デザイン性向上などが求められている。現在、CIDの主流は7~8インチだが、今後は10インチ以上のHD、フルHDパネルの採用が進むと見ている。
―― 高品質かつ多種多様な性能が求められる車載ディスプレーですが、貴社のキーテクノロジーは。
月崎 先述のとおり、車載ディスプレーには異形状や曲面、狭額縁、高輝度・低消費電力、さらにはタッチ機能など、様々な性能や機能が求められている。
それらの実現に向け、当社ではLTPS(従来はα-Si TFT)への切り替えを進めている。これにより、駆動回路の搭載数削減によるシステムコスト低減、高開口率・狭額縁化、異形・曲面への対応、インセルタッチパネル「Pixel Eyes」、バックライトの発熱低減などニーズに応えることが可能となる。
なお、LTPSパネル採用の車載ディスプレーは、18年モデルの市販車から搭載される見通しだ。
―― 今後の市場展望や事業戦略について教えて下さい。
月崎 今後、コネクテッドカーの進展に伴い、車載ディスプレーでは映し出す情報量はスマートフォンなどと同等になる。つまり、そこではより高精細のパネルが求められる。
また、ミラーレス・カーの普及拡大(電子ミラー化)が進めば、車載用パネルの搭載数が大きく拡大することが期待される。一方、電子ミラー用パネルには低温環境での応答性能、一層の高速化が不可欠となる。
さらに、当社がパネル供給でトップシェアを持つヘッドアップディスプレー(HUD)も今後、欧州市場向けを中心に高成長が見込まれている。
このように、今後の車載ディスプレーは、さらなる高機能化・高性能化が強く求められることになるが、当社ではLTPSをコアテクノロジーとしてユーザーニーズに広く対応していくことで、20年には15年度比2倍以上の売上高を目指していく。
(聞き手・清水聡記者)
(本紙2016年5月26日号2面 掲載)