シンフォニアテクノロジー(株)(東京都港区芝大門1-1-30、Tel.03-5473-1803)は、半導体製造工程向けにロードポートやEFEMなどのクリーン搬送機器を展開している。2015年12月16~18日に開催された「セミコン・ジャパン」では、GaN用EFEM(基板自動搬送装置)などの新製品を紹介した。新規領域として医療分野の研究開発にも注力している。電機システム本部長で取締役常務執行役員の川久伸氏に話を聞いた。
―― セミコンに出展した新製品について。
川久 GaN用EFEMは、LEDやGaNパワーデバイス市場をターゲットとしたもので、今後の大口径化を視野に入れて6/8インチに対応している。装置内を高清純度・N2雰囲気に保ち、高歩留まりを実現できる。MOCVD装置メーカーと共同で開発を進めており、18年ごろから量産採用が始まると見込んでいる。
ロードポートでは、10nm以下の世代をターゲットにした次世代モデルを紹介した。振動を抑制する機構を搭載し、パーティクル耐性を向上させている。また、最新の高機密性FOUPに対応しており、開閉時のトラブルを抑制できる。さらに、当社独自のN2パージ機構を標準搭載していることに加え、すでに設置済みの装置に後から現地改造で切り替えることも可能だ。これにより顧客の利便性を大きく向上した。
このほか、200mmと300mmを簡単に切り替えられるロードポートを展示した。両サイズが混在する製造ラインに最適で、300mm用装置で培ったクリーン化などの技術を盛り込んでいる。IoT市場が拡大するとともに需要が伸びると予想されるセンサーなどの製造ラインをターゲットとするが、1980年代のレガシー200mm装置で満足されるのか、300mmで培った技術を取り込んだ「新200mm装置」が求められるのか、市場のニーズを見極めたい。
―― これら以外の新製品開発の状況を。
川久 当社はN2ロードポートで約90%のシェアを獲得している。応用展開として、N2EFEMを開発している。評価機を製作し、デバイスメーカーの評価を受けているところだ。EFEMにN2パージ機構を搭載することでメリットを発揮できるのは7~5nm世代と想定されるため、本格的に採用されるのはまだ先の話となる。しかし、デバイスメーカーは、今後微細化が進めばN2パージは必須になると認識しており、当社が先んじて開発することでデファクトスタンダードを獲得したい。
また、ここ3年ほど注力しているのが真空ソリューションだ。大気圧で実績のあるリニア搬送機器において真空対応モデルを開発しており、装置メーカーの評価を受けている。今後、装置メーカーにおけるプロセスの統合、効率化によって真空ニーズはますます高まると予想され、ラインアップを強化する方針だ。
450mmウエハー対応機器としては、大気・真空搬送装置を開発済みだ。量産採用への動きは停滞しているが、コンソーシアムでの開発は進んでいるので、フィードバックがあれば対応していく。
―― 医療分野に向けた取り組みについて。
川久 東京エレクトロン(株)(TEL)の共同研究プロジェクトに参画し、再生医療分野向けの細胞培養用無菌搬送システムの開発を行っている。半導体で培ったクリーン搬送技術を、細胞培養の自動化などに応用する。TELが英国に開設した幹細胞テクノロジーセンター内に試作機を設置し、評価と改良を進めている。実用化までは時間を要する見込みだが、将来有望な分野として取り組む。
―― 足元の事業動向と今後の見通しを。
川久 15年度は当初想定していたよりも好調に推移している。メモリー投資が拡大したことにより、需要が増加しているためだ。下期にもロジックメーカーの新規投資拡大が計画されているため、好調が続くと見込んでいる。年間の売上高は90億円強を予想する。16年度は台湾向けの需要拡大が見込まれているため、当面は好調が続きそうだ。
―― 生産体制の拡充について。
川久 クリーン搬送機器は豊橋製作所(愛知県豊橋市)内の専用工場がマザー拠点で、海外ではタイで生産している。タイでは汎用ロードポートを生産しているが、豊橋から製造をシフトして機種を拡充し数量を拡大させている。豊橋では、真空機器用のクラス1000クリーン製造スペースを拡張した。従来のクリーンブースから部屋の区切りがあるクリーンルームとして独立させるとともに、製品検査機能も向上した。今後も高付加価値製品の生産拠点として、必要な機能の増強を進めていく。
―― 中長期的な目標について。
川久 中期目標として、17年度に150億円の売り上げを掲げている。これを確実なものとするためには、さらなる上積みが必要と認識しており、新製品の拡販・新規顧客獲得などに注力していく。また、将来的な成長戦略としてM&Aも検討している。医療分野などを対象に有望な技術を持ったベンチャーの調査を進める。
(聞き手・中村剛記者)
(本紙2016年1月21日号10面 掲載)