商業施設新聞
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No.528

「花嫁のれん」が金沢・和倉温泉間を走る


笹倉 聖一

2015/10/20

発表会に臨む野中JR西日本金沢支社長(左から1人目)、辻口さん(同2人目)、羽田さん(同3人目)、堀坂JR西日本常務(右)
発表会に臨む
野中JR西日本金沢支社長(左から1人目)、
辻口さん(同2人目)、羽田さん(同3人目)、
堀坂JR西日本常務(右)
 JR西日本は、石川県の金沢と和倉温泉の間で、真っ赤な車体に黒いデザインを施した七尾線観光列車「花嫁のれん」の運行を開始した。東京での記者発表会には、女優の羽田美智子さん、パティシエの辻口博啓さんが同社幹部とともに登壇し、北陸への思いを述べた。

 3月に北陸新幹線 金沢・富山―長野・東京間が開通してはや半年が過ぎた。北陸は観光客増で沸き、JR西日本は新幹線に接続する2次、3次交通を充実・強化して誘客を促進する事業戦略に移っている。その1つが七尾線観光列車「花嫁のれん」だ。記者発表会で配布されたDVDの映像を見ると、真っ赤な車体に、窓の周りが黒色で塗られた鮮やかな色彩。北陸の田園風景に車体が映え、DVD映像だけで旅行気分を味わえる。秋の稲刈り間近の黄金色の田んぼが似合い、DVDでは雨天で曇った景色の中でさらに色鮮やかだった。

 外観は、伝統工芸の輪島塗や加賀友禅をイメージしたデザインで、車内には、日本庭園の飛び石を表現した絨毯を敷き、友禅をあしらった空間を施した。車内の金色の扉を開けると、細い木々の柱が立った和室の空間が現れる。座席は座り心地の良さそうな真紅。青、桜梅、扇絵、撫子、鉄線、菊、錦秋、笹の図柄が背壁に施された多くの個室のような空間が配置されている。

 花嫁のれんとは、花嫁の幸せを願い、婚礼の日にのれんを贈る石川・富山の伝統文化。2010年から5年間にわたり、ドラマ「花嫁のれん」に出演した女優の羽田美智子さんも記者発表会に参加し、「嫁を送り出す側の家紋を入れ、嫁ぎ先の仏様の前に飾る花嫁のれんは、一度くぐると戻ってはいけないとされる覚悟ののれん。実家の愛を感じながら嫁ぎ先の家に尽くすのだよと言い渡される花嫁のれんのおかげで、石川県の離婚率はとても低い」と話した。羽田さんは、新観光列車による旅先として、美肌に良い和倉温泉や、醤油アイスクリームがおいしい七尾に期待する。

 列車内のもてなしのスイーツは、七尾市出身で世界的に活躍するパティシエの辻口博啓さんによるもので、同氏は「焼き菓子には能登紫芋、輪島発芽玄米、中島菜、能登金時などの地元食材を多用、北陸を訪れたくなる味を意識した」という。

加賀屋総料理長監修による和軽食セット
加賀屋総料理長監修による和軽食セット
 発表会で試食した和軽食セット(2500円)は、石川の名門旅館「加賀屋」の総料理長監修による能登特産の食材や郷土料理などが織り交ぜられ、のどくろとますの押し寿司が絶妙である。

 JR西日本常務執行役員の堀坂氏は「加賀屋監修の和装アテンダントによるおもてなし、車内サービスを提供する」、同社執行役員金沢支社長の野中氏は、「伝統芸能などを披露する車内イベントスペース『楽市楽座』では地域活性化への貢献を期待する」と述べた。

 今年の秋は、北陸で紅葉を楽しもうかと思う。DVDの車両走行映像を見ているだけでも旅行気分を味わえるのだが、実際に行って乗って、能登酒による「ほろよいセット」(2000円)を味わうのもおつだろう。
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