―― 業績の動向から。
澤村 2014年度の売上高は前年比9.6%増の3627億7200万円、営業利益は同64.2%増の388億円だった。数年前から国内民生から自動車・産業機器・海外民生へとシフトする市場改革、アナログパワーを核として競争力のある商品を生み出す商品改革、工場再編や品質の作り込み、コスト低減といった構造改革の3つの改革を進めてきたが、これらの成果が出てきた。また、円安が進んだことも利益を押し上げた。
15年度は産業機器に調整が入っていることや、スマートフォン(スマホ)向け需要が端境期にあることからやや鈍いスタートとなった。第2四半期以降に拡大を予想する。一方で、自動車向けは安定して推移している。通期売上高は前年比7%増の3880億円、営業利益を同8.2%増の420億円と予想している。
―― スマホ・ウエアラブル向け超小型部品を拡充している。
澤村 RASMID(ラスミッド)シリーズは、LSIの製造プロセスを応用して従来の限界を超えた小型化と寸法精度を実現した。13年から世界最小のチップ抵抗、ツェナーダイオード、ショットキーバリアダイオードを相次いで量産化し、ラインアップを拡充している。また、スマホ・ウエアラブル向けとしては通信ICやMEMSセンサー、光センサーモジュールも展開している。こちらも製品ラインアップが揃ってきており、今後拡販を進める。
―― 自動車・産業機器市場向けの取り組みは。
澤村 両市場向けの売り上げ比率は、14年度末時点で35%を占める。これらをターゲットとしたアナログパワー分野には、数年前から営業・開発人員の50%を割いて育成に取り組んできた。売り上げ比率も早期に40%に高めたい。大手デバイスメーカーと協業して周辺デバイスを提供するリファレンスビジネスでは、インテルのプロセッサーやフリースケールのマイコン向けPMICを製品化している。また、将来的にはIoT化に伴ってセンサーや無線通信モジュールの採用が進むと見ている。
―― 自動車向けではSiCデバイスの採用も期待されます。
澤村 現在、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド(PHV)用の急速充電器向けに採用され、高いシェアを持つ。数年後には車載モーターなど自動車の内部に搭載が始まる見通しで、国内外の大手自動車メーカーと共同開発を進めている。また、15年初頭には6インチでの生産を、6月からはトレンチ型MOSFETの量産を世界で初めて開始した。自動車に求められるデバイス性能の向上とコスト低減の両方を実現できる。
―― 15年度は750億円の設備投資を計画している。
澤村 前年比1.5倍に拡大する。うち333億円を生産能力向上に充当し、各拠点で増強を行うほか生産性改善にも注力する。また、タイ工場とマレーシア工場で新棟を建設しており、後工程の生産能力を引き上げる。タイは15年12月、マレーシアは16年8月の完成を予定している。最新パッケージへの対応を強化するほか、既存パッケージの生産性を向上する。
―― ルネサス滋賀工場8インチを取得する。
澤村 ロケーションに優れ、新しい設備を備えたハイレベルな工場であることから、取得を決めた。15年内にラインの転換を進め、自社拠点「ローム滋賀」として16年2月の稼働を予定している。パワーデバイスや圧電MEMS関連製品を中心に生産する。
―― 今後の戦略を。
澤村 研究開発ではSiCを中心に、GaNやパワーモジュール、各種センサーに注力する。一方、素材からの基礎研究にも取り組む。販売面では国内外で構築している直接販売チャネルと並行して、産業機器市場向けに間接販売チャネルを構築する。
―― M&Aについて。
澤村 常に検討している案件はある。当社の強みをさらに伸ばせる可能性があれば、積極的に取り組んでいく考えだ。
(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年7月16日号1面 掲載)