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第122回

NECトーキン(株) 代表取締役執行役員社長 小山茂典氏


車載リレーを筆頭に医療・環境分野が好調
素材革新をベースにグローバル企業へ

2015/5/22

NECトーキン(株) 代表取締役執行役員社長 小山茂典氏
 車載用リレーを戦略商品に躍進を続けるNECトーキン(株)。事業は、リレーを抱えるEMデバイス部門、ノイズ抑制シートを擁すEMC部門、ポリマータンタルキャパシタを持つキャパシタ部門、そして次代を担うセンサー・アクチュエーター部門の4つで構成される。各部門が戦略商品を持つことで、2014年度売上高は前年度比10%増の536億円に達する見通しだ。さらなる2桁成長に向けて、代表取締役執行役員社長の小山茂典氏に今後の事業戦略を伺った。

―― 貴社の沿革と企業理念について。
 小山 当社は産官学連携から誕生したベンチャー企業である。東北大学金属材料研究所の本多博士が発明した「KS鋼」、増本博士が発明した「センダスト」。これらを企業化するため、当時の逓信省(現NTT)勧奨により、大手通信機メーカーが共同出資して生まれた。1938年4月のことである。
 その後、88年に(株)トーキンに社名を変更。02年にNECのキャパシタ、リレー、電池の3事業を統合するかたちで現社名となった。13年には米国の電子部品メーカーであるケメット社と資本・業務提携を行った。設立から80年近くが経つ。
 13年初頭に新企業理念を制定した。それは、素材革新をベースに真のグローバル企業として成長すること。ベンチャー魂は今も健在である。

―― 売り上げ規模と取り扱い製品について。
 小山 14年度の売上高は前年度比約10%増の536億円になる見込みだ。事業別では大きく4部門で構成する。まずはここ3年間、年率30%の伸びで躍進を続けるEMデバイス事業がある。車載用およびネットワーク装置用のリレーを扱う。14年度の売上高は180億円に達する。
 EMデバイス事業とともに当社の成長のもう一翼を担うのが、EMC事業である。同部門はノイズ抑制シートで業界シェア60%を制する「バスタレイド」を筆頭に、ACラインフィルター、パワーインダクタ、フェライトコアなどを取り扱う。14年度は190億円の売上高を見込む。
 第3の柱として活躍するのが、ポリマータンタルキャパシタや電気二重層キャパシタを扱うキャパシタ事業である。売上高は110億円になる見込み。
 4番目に位置するのが、次代のIoE(Internet of Everything)到来をにらむ、圧電素子によるセンサー・アクチュエーター事業である。まだ50億円規模の売上高だが、今後の飛躍に期待したい。

―― アプリケーション別ではどのような傾向か。
 小山 注目分野は車載、医療、環境エネルギー、産業機器など。これらアプリ向けの売上高が、かつての40%以下から60%を占めるに至った。同分野へのビジネスはこれまで以上に強化する方針だ。また、航空・宇宙分野では「はやぶさ」1号および2号のイオンエンジンに当社製の磁気回路が搭載されている。

―― 生産体制は。
 小山 宮城県白石市にある本社・白石事業所をマザー工場に据え、国内は仙台市の仙台事業所と富山県入善町の富山事業所の計3カ所を有している。海外は4カ所に工場を配備。中国、タイ、ベトナムに加え、フィリピンには2工場を設置した。仙台事業所は材料研究開発本部として機能する。富山事業所はキャパシタの開発・設計を担う。
 量産工場として機能するのが海外拠点で、中国工場は磁性材料と部品の製造、ベトナム工場は中国工場から磁性材料の供給を受けて部品製造を担う。タイ工場はキャパシタの製造、フィリピン工場はリレーの製造を担当する。生産比率は海外が60%、国内は40%。ただし、国内は最先端品や高付加価値品を担う。

―― 飛ぶ鳥を落とす勢いですね。
 小山 とんでもない。社員一丸となり、困難からの再生と認識した方が正しい。08年のリーマンショックを発端に、日系エレクトロニクス産業の危機感がひしひしと伝わってくるご時世だった。そうしたなかで11年3月に東日本大震災が襲った。さらに追い打ちを掛けるように、同年10月にはタイで大洪水に見舞われた。とりわけタイ工場は20年の歴史を持つ。長い歳月を費やし、生産ノウハウを移植した約4000台の製造装置すべてを洪水で失った。

―― 具体的な再生への道とは。
 小山 当社の強さの原点は、キャパシタ材料から磁性材料、セラミックに至るまで、コア材料を独自開発するところにある。
 この材料革新への挑戦を競争原理として、再生を具現化するため新工場建設に踏み切った。その1つがタイ工場だ。これまで洪水が発生していないウェルグロー工業団地に、12年5月に新工場を建設した。最新鋭の設備を導入し、洪水以前よりも、より小型・薄型を追求したキャパシタ製品の提供を可能とした。
 さらに、翌13年2月には、車載用途で需要が増大しているリレーの生産に対応するため、フィリピンに第2工場を新設した。
 一方、経営面では、時期を同じくして、米ケメット社と資本・業務提携を敢行。真のグローバル化に向けて挑み始めた。
 当社はまだまだ再生途上にある。それを踏まえることで、冒頭の新企業理念が活きてくる。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年5月21日号10面 掲載)

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