商業施設新聞
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No.503

オシャレを訪ねて三千里


高橋 直也

2015/4/21

庶民の味方!
庶民の味方!
 冬は過ぎたはずだがまだまだ寒い。最近知ったのだが4月の平均気温は11月とあまり変わらないらしい。しばらくはヒートテックを手放せない。この寒い時期に感心するのがオシャレを優先して薄着する人だ。

 真冬でも8分丈のズボンを履き、くるぶしが見える短めの靴下を着用する人をしばしば見かける。見ているこっちが寒くなるが、オシャレの前に実用性は無力だ。彼らはきっと風邪を引いて病院に行くときも、同じような格好で行くのだろう。その意志の強さは格好良いし、憧れる。オシャレとは服装を見せびらかすことでなく、こだわりを貫き通す心意気を表現することだと思う。

 ところが上っ面の邪道も存在する。3月中旬のことだ。まだまだ寒く、近所のローソンにホットコーヒーを買いに行った。レジに並んでいると、30代くらいの女性が会計していたのだが、この人がいかにも高そうな服を着ていた。

 上着はヒョウ柄のコート、下はズボンなのだが、腰辺りまでスリットが入っていた。夏場なら大胆なスリットに目を奪われるのかもしれないが、最高気温は一桁台。この人もオシャレを貫いているんだな、と感心していた。女性の手元を見ると、手には日本人なら誰でも知っている高級ブランドの買い物袋を持っている。銀座の旗艦店にでも行ってきたのかもしれない。

 そこで、ふと違和感が沸いた。こういう人でもコンビニを使うんだ、と。確かにコンビニはスーパーと比べると値段が高い。それもあって消費増税の際は、客がスーパーに奪われたと言われている。しかし、コンビニといえば庶民が集う場だ。ヒョウ柄&スリットで、高級ブランドの買い物袋を持っている人は異質に見えた。ただ、会計をしている商品は缶コーヒーだったので、いちいち高級スーパーに行く必要はないのか……と思っていると女性が一言。「ポイント使ってください」。
ポイント? まさかブラックカードのポイントでも使う気か?とレジを覗くと、差し出したのはPontaカードではないか。

 Pontaカードはローソン、AOKI、大戸屋などで使える共通ポイントカードだ。ローソンだと100円で1ポイント(1ポイント=1円相当)貯まる。週に数回ローソンを使えば、1~2カ月で100円分が貯まり、意外と節約できる庶民の味方だ。

 しかしヒョウ柄&スリット、高級ブランドの買い物袋という様相で、100円ちょっとの商品を節約すると、周囲は「あのヒョウ柄、偽ものか?」「あの買い物袋すごい無理して買ったのかな……」と邪推してしまう。TPOに即して「お釣りはいらないわ、ボウヤ」と言って欲しかった。

 そういえば中学のとき「腰パン(腰履き)」が流行り、ヤンキーに憧れる友人が尻まで制服のズボンを下ろしていた。友人はそれを自慢気に「なまら格好いいべ?」と見せてきた。友人を傷つけないようにあいまいな返事をすると、友人は都合よく解釈してしばらく腰(尻)パンを続けていた。

 ある日、友人のズボンは正常の位置に戻っていた。「先生に怒られたのか?」と聞くと「歩くのが大変だから」と実用性に満ちた答えが返ってきた。オシャレを貫くのは大変らしい。
 もしかしたら、コンビニにいた女性はPontaカードを使うことで、オシャレを追い求める疲れから解放されていたのかもしれない。
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