3月1日、JR博多駅の新幹線口(筑紫口)側のヨドバシカメラに抜ける「いっぴん通り」に、北九州で有名だった「シロヤ」が開店し、連日、行列ができている。
博多の住人は今、「シロヤのパンって知っとうや?」と話題にしている。北九州市出身の僕にも聞いてくるけど、僕は「知っとうよ」とだけ答える。それ以上は話さない。なぜなら、シロヤは派手なパン屋さんではなく、その魅力を長々と語れるほどではない。それに行列も開店直後だけだろうと思っていたからだ。
シロヤは北九州市に昔からあるパン屋だ。子供の頃によく通りかかった黒崎店(北九州市八幡西区)では店の奥でたくさんの職人さんが、白い仕事着を着てパンを作っていて、焼き立てを店頭に出していた。
人気商品は、フランスパン生地に練乳を入れた「サニーパン」や生クリームをケーキ生地で包んだ「オムレット」などだ。僕は食パンが好きで、しっとりもちもちした食感が記憶に残っている。今、博多駅では、人気商品が売り切れても、次の入荷待ちの列ができている。
同じ福岡の天神では、パリで人気のベーカリーやニューヨーク発祥のベーカリーが人気を呼んでいる。パン好きが憧れるブランドのパンを天神に行けば買えるようになった。ブランドのベーカリーを買うために、遠方から福岡に訪れる人もいる。一方、シロヤのパンを買うために北九州まで行く人はいない。何かの用事で北九州に行った時、社内や家族のために買ってくるくらいだ。
確かに見た目の華やかなパンを食べるのは楽しいが、普段使いの素朴なパンは飽きない。しかも価格が安いときている。洋服に例えると、パリやニューヨークのパンがお出掛け用なら、シロヤのパンは普段着なんだと思う。「三丁目の夕日」のパン屋の風景に似ている。
シロヤは開店20日が過ぎても行列が途切れない。シロヤ自体も今の異常人気に驚いているのかもしれない。僕としては早く客足が落ち着いて欲しい。そうしないと、僕がシロヤのパンを食べられない。