電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第665回

SEMITEC(株) 代表取締役社長 石塚大助氏


未知のセンサー技術を創出
「コト売り」で堅実成長目指す

2026/2/20

SEMITEC(株) 代表取締役社長 石塚大助氏
 サーミスター温度センサー大手のSEMITEC(株)(東京都墨田区)は、戦略投資を加速している。2024~26年度の3年間で150億円の投資を計画しており、26年3月にはメキシコで製造拠点を開設するほか、国内でも生産能力の増強に取り組んでいる。製品開発では「世の中にないセンサー技術の創出」を目指し、最近では新開発の風速センサーが電子吹奏楽器に採用された。代表取締役社長の石塚大助氏に、今後の展望を聞いた。

―― 業績が好調です。
 石塚 24年度(25年3月期)の売上高は253億円で過去最高を達成した。売上高は直近の10年間で倍増し、営業利益は6倍になった。自動車や医療などの成長分野への参入により業績が伸長している。収益性についても、参入障壁の高い医療向け製品に注力することで高収益体質を実現し、粗利益率は30%以上を維持している。

―― 自動車が売上高全体の4割弱です。
 石塚 自動車向けの売上高は6年間で3倍になった。当初はハイブリッド車(HV)のバッテリー用温度センサーの供給からスタートしたが、現在はHVのモーター用や電気自動車(EV)向けの販売も好調だ。ただ、近年は価格競争が厳しく、標準化の進行などで差別化が難しくなっている。

―― 医療向けも拡大しています。
 石塚 参入当初は主に体温計用だったが、08年から手術用カテーテル向けに薄膜サーミスターを供給している。当初はカテーテルの主要市場である米国で販売を始めたが、現在はグローバルに展開している。さらに、10年前からバルクのNTCサーミスター技術を応用した血糖値測定機器用センサーの販売も開始した。当社の温度センサーで測定精度を維持する仕組みで、体に貼り付けるだけで血糖値を測定できるのが大きな特徴だ。現在、血糖値測定機器用センサーは医療向け売上高の大きな割合を占めている。

―― 事業環境の変化について。
 石塚 以前はサーミスターの用途は限定的だったが、近年はあらゆる電子機器にサーミスター温度センサーが導入されており、市場規模は拡大している。一方、参入企業の増加で供給量も急増し、それが価格下落の要因となっている。さらに、業界の再編も進んでいる。こうした事業環境の変化に対応するため、当社は5年前から「モノ売り」から「コト売り」に舵を切った。

―― コト売りとは。
 石塚 従来のような部品単体の販売では、価格競争による収益悪化が避けられない。そこで、現在はソリューション提案型であるコト売りに注力している。第1弾として小型の風速センサーを開発し、電子吹奏楽器に採用された。小型化はもちろん、管楽器特有の微細な息づかいやニュアンスへの再現性が評価された。さらに、真空断熱材に埋め込む真空センサーや、薄膜サーミスターを活用した熱伝導式冷媒ガスセンサーなどの開発も進んでいる。

―― 生産体制の見直しが進んでいます。
 石塚 以前は中国に5つの工場があったが、すでに3工場を閉鎖して現在は広東省に2工場があるのみだ。また、中国では25年末でコア製品(バルク素子およびチップ)の生産を終了した。コア技術の開発や生産を日本に集約することで、新技術の開発および生産を強化する。千葉工場(千葉市)では薄膜サーミスターの増強を進めており、投資を実行しながら順次稼働中。27年3月期から本格稼働を予定しており、国内で新工場の建設も検討している。

―― 北米やインドの市場も強化します。
 石塚 米国の販売は6年間で3倍に拡大したが、北米市場の強化に向けて、メキシコに工場を建設する。自動車、医療向けのセンサーを生産するほか、米国における最先端事業への参入の拠点として活用する。26年3月から順次生産を開始する。
 インドには19年に進出し、家電向け温度センサーを生産している。24年度は日系メーカーの生産が本格化したほか、現地メーカーからの受注も増加したことで販売が急増したが、数年後には売り上げ倍増を狙う。

―― 今後の展望は。
 石塚 当社は生産や販売の規模では競争しない、グローバルニッチトップ戦略を掲げている。薄膜サーミスターを中心としたオンリーワン製品を武器に、カスタム対応力、さらには世の中にないセンサーを開発することで、堅実な成長を目指す。



(聞き手・松永新吾記者)
本紙2026年2月19日号5面 掲載

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