高度な開発力・技術力を武器に生み出される、少量多品種で高付加価値な産業機器向け小型精密モーターに定評のあるシチズン千葉精密(株)(千葉県八千代市)。2025年4月からは、同社で初めてプロパー出身の代表取締役社長となった追杉豊氏が率いている。追杉氏は入社以来、同社の強さの象徴ともいえる開発部を率いてきた。追杉氏に、現況、新製品やその特徴、抱負などをお聞きした。
―― 貴社でのご経歴を。
追杉 当社入社後すぐに開発部所属となり、モーター開発のサポートに携わった。その4年後に、サーボドライバー制御回路の立ち上げを担当させていただくに至り、これを契機に、基板設計・回路設計一筋に歩んできた。モーターを制御回路からみる目線が培われたと自負している。今ではモーターの良さを制御回路で引き出す匠の技が、当社の武器になっている。
―― 現状の主要製品群は。
追杉 金額ベースでガルバノスキャナー(GL)が約4割、アクチュエーターとブラシレスモーターがそれぞれ約3割弱、残りをドライバーやDCモーターなどその他製品群が占める。本音をいえば期待値はGL5割であり、今後の伸長が期待される。
―― 業績について。
追杉 23年度は前倒し発注による過剰受注であったため、24年度はその反動で在庫調整局面となり、売上高は前年度比減収の約24億円で着地した。25年度は半導体製造装置関連需要の低迷が懸念材料だが、主力のGLがレーザー関連や医療関連需要で持ち直してきており、売上高は25億円程度へと微増を見込む。特に、12月以降は医療関連で生産ラインはフル稼働となっている。
―― レーザー関連や医療関連向けでの需要増とは。
追杉 自動車関連部品などでハイパワーレーザーカットや金属溶接、3Dプリンターによるアディティブマニュファクチャリング向けに、大型GLのニーズが高まっている。正確な位置決めが可能であるからだ。エネルギー密度、パワーが大きいほど大型ミラーが必要であることから、通常は外径9~14mmサイズのGLが主流だが、当社では25年春に大型ミラーを採用した外径31mmサイズのGLのサンプル供給を開始した。25年度内には量産を開始する予定だ。医療関連ではOCT(眼底三次元画像解析)検査向けなどに活用されている。レーザー市場は毎年10%成長が継続しており、OCT検査装置も需要は底堅い。自然と当社のGL需要も強含みを見込む。
―― 半導体製造装置向けも高精度品で貢献する。
追杉 前工程用の露光装置、マスク検査装置、チップレットなどのいずれにおいても、サブミクロン単位の位置決めが求められる。そのため当社では、モーター1回転で分解能6万4000分割が可能な高分解能リニアアクチュエーターを開発し、展開している。当社カタログ品は1回転で分解能2000分割であることからも、技術的な難易度の高さがご理解いただけるだろう。
―― 注目の新製品は。
追杉 アモルファスコアを採用した8万回転の高速ブラシレスモーター、ブラシ構造を改善して2万8900回転、かつ従来品比2倍の長寿命化を実現する高速コアレスDCモーター、高密度な巻線や磁気回路を最適化し、従来品比130%の出力向上を図った高出力ブラシレスモーターなどが挙げられる。小型化要求とパワーアップというトレードオフ克服に挑んだ新製品ぞろいである。
また、分解能15.6nmを実現するリニアアクチュエーターも当社技術の粋を結集した期待の製品だ。緻密な制御を要する電子顕微鏡のステージを動かす部分などに適する製品であり、ハイエンド領域の研究開発機関などでの広がりを見据えている。加えて、さらなる高精度化、温度特性向上を可能にするGLのデジタルタイプも開発中であり、2年後の上市を目指している。
―― 設備投資計画について。
追杉 生産体制は、付加価値品を本社工場および第2工場(千葉県八千代市)、量産品は中国工場(東莞市)が担っている。中国工場に遊休スペースがあるため、今後増強を要するタイミングが訪れた際は対応できる余地がある。現状では大型投資の予定はないが、年間約1億円前後を設備更新や合理化・自動化などに投じていく予定である。
―― 最後に新社長としての抱負、展望を教えて下さい。
追杉 開発力でお客様に付加価値を提供する、という当社のビジョンは不変であり、今後も踏襲していく。開発力、技術力は当社の生命線であり、新製品を投入しながら次の世代へバトンタッチしていきたい。また、持続的な成長を見据え、将来を見据えた人材育成も重視して取り組んでいく。当社のいかなるニーズにも挑むチャレンジ精神、新たな開発に邁進するスピリッツを今後も育み続けていく。
(聞き手・高澤里美記者)
本紙2026年2月5日号5面 掲載