電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第656回

SMFLみらいパートナーズ(株) 電子デバイス設備部長 下田 力氏


ワンストップで幅広い対応
中国以外の市場深耕がカギ

2025/12/12

 2024年10月1日、三井住友ファイナンス&リース(株)(SMFL、東京都千代田区)は、半導体などの電子デバイス製造装置に関連する中古売買事業および同事業の周辺事業をSMFLみらいパートナーズ(株)(東京都千代田区)へ移管した。SMFLは、約30年にわたって半導体製造装置の設備リースや中古売買を展開。設備リースから中古売買や技術サービスまでを広く手がける総合力は、顧客から高い評価を得るとともに、長年培った経験・ノウハウ、そして専門知識に裏打ちされた信頼で、デバイスメーカーの経営層などから助言を求められることも多い。SMFLみらいパートナーズ 電子デバイス設備部長の下田力氏に、事業移管がもたらした利点や、ビジネスの概況、展望などを伺った。

―― 改めて、24年の事業移管によるメリット、さらなる強みについて。
 下田 事業移管により、技術サービスを中心に業務の幅が広がった。例えば、装置や製造ラインの工場間の移設では、無害化や解体、再設置の対応機種拡大に加え、輸送や一時保管にも対応し、ワンストップでのサービスを提供することで、お客様の煩雑な手間と工数の省力化に寄与している。
 事業移管の大きな目的の1つは、技術サービスを強化することであり、そのためにパートナー企業との連携の拡大を進めている。さらに当社は、従前より電子デバイス製造工場に太陽光発電設備を設置して電力を供給するサービスも展開してきた。こうした装置以外の事業との相乗効果をもって、工場に対してより幅広いソリューションを提供できる体制となった。

―― 新品装置の取り扱いも視野に入れている。
 下田 そのとおりだ。SMFLの一事業部としてビジネスを展開していた際には、業法上の制約により新品装置の取り扱いは限定的であった。しかし、現在は新規ビジネスとして、日本市場の開拓を希望する海外新興装置メーカーと、装置コスト低減を追求する国内デバイスメーカーを商社的につなぐ役割を試行し、事業として近々スタートできる見通しだ。

―― 25年度上期の事業収益について。
 下田 現在の半導体市場を見ると、生成AI関連など、一部の領域は非常に活況を呈しているものの、中古装置が主に活用されるパワー半導体などのレガシーデバイス領域は、市場自体が依然軟調で、過剰生産能力の処分や新規設備投資の先送りもあり、少なくとも26年年央までは厳しい状況が続くと見込まれる。世界の中古装置の販売は台数・金額とも、前年比で半分以下になると見込まれ、総じて供給過剰の状態が続く。

―― 仕入れの状況は。
 下田 設備更新が比較的早いメモリーメーカーから300mm装置の余剰設備を購入する機会は継続的にあるが、200mm以下の装置やテスト工程の余剰設備の購入機会も前年比で増加している。米国製装置については、売主であるデバイスメーカーも域外適用がある米国再輸出規制に留意しているため荷動きが鈍い。近々実施が見込まれる米国当局による輸出規制のさらなる強化は、中古装置の流通にも大きな影響を及ぼすことから、当局の動向をしっかりと把握して輸出管理を徹底していく必要がある。

―― 下期以降の展望、25年度通期の収益見通しは。
 下田 25年度通期の収益(売上総利益)は、前年の好調の反動もあり前年度比マイナスの見通しだ。ここ数年の主な販売先である中国では、中古装置の内国滞留が顕著で、国産の新品装置へのシフトも進展しているため、しばらくは低調に推移すると見る。一方で、米国などでは若干明るい兆しもあり、底打ち感も出てきている。当社では目の前の案件に取り組み、収益化を図っていく。

―― 設備リース・ファイナンス関連の状況は。
 下田 リース・ファイナンス関連は事業部収益の2割前後を占めている。積極的な設備投資を進めるお客様には装置メーカーとも密に連携し、ニーズに合うカスタムメードの提案を志向している。デバイスメーカーのお客様における既存設備を活用した手元流動性の確保のほか、装置メーカーにおける債権の早期現金化などの金融面での相談も確実に増えている。今後も中古売買のノウハウを活かした装置価値に着目した手法も交えて、SMFLグループとしてリース・ファイナンスを引き続き推進していく。


(聞き手・清水聡記者)
本紙2025年12月11日号24面 掲載

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