電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第654回

キヤノン(株) 専務取締役 インダストリアルグループ管掌 武石洋明氏


ArFドライに再参入
NIL「顧客の本気度感じる」

2025/11/28

キヤノン(株) 専務取締役 インダストリアルグループ管掌 武石洋明氏
 キヤノン(株)(東京都大田区)の半導体露光装置事業は、i線ステッパーを主力に事業規模を広げている。近年はKrFでもシェア拡大に力を入れているほか、ArFドライ装置も新機種の開発を進めるなど、業容拡大に意欲を見せる。さらにナノインプリントリソグラフィー(NIL)も本格採用に向けた道筋ができつつあり、新たな成長フェーズに差し掛かっている印象だ。インダストリアルグループを統括する武石洋明専務取締役に、足元の市況ならびに2026年に向けた展望を聞いた。

―― まずは、直近の販売動向から教えて下さい。
 武石 第3四半期(7~9月)決算発表時点で、25年の半導体露光装置の販売台数は、計241台を見込んでいる。うちi線は191台、KrFは50台を見込んでおり、i線は生成AI関連をはじめとする先端パッケージ向けに前年を上回る販売規模を想定している。ただ、年初に計画した数字に対しては下ぶれているのが実情だ。

―― 下ぶれの主な要因は。
 武石 先端パッケージ向けは想定どおりによかったが、メモリー投資が期待していたほど戻ってこなかったこと、そして車載およびパワー半導体が低迷したことが大きかった。ただ、足元ではパワー半導体投資が中国でも回復の兆しが見えてきたほか、メモリー投資もグローバル顧客を中心に前倒しの兆候も見られており、明るい材料が出てきている。

―― そうなると、26年は強気の計画を組めそうですね。
 武石 現時点の状況で考えれば、まだそこまでポジティブになるほどの材料が出揃っていないのが正直なところだ。まず先端パッケージ向けは25年がかなりのボリュームであったこともあり、その反動減があるかもしれない。また、パワーもまだ戻りきっていない。26年上期はある程度確度が高くなっているものの、下期に対する不透明感もあって、まだ慎重に見ている状況だ。

―― 主力のi線に加え、近年はKrFやArF分野にも力を入れています。
 武石 KrFはメモリー向けで高いポジションをキープできているほか、近年は徐々にロジック向けでも採用を伸ばしてきている。また、KrF最新機種のプラットフォームをベースに、ArFドライ装置の開発も進めており、再参入というかたちで26年から市場に投入したいと考えている。一部特定顧客にはすでに出荷実績があり、今後本格的なプロモーションを開始していく計画だ。
 微細化に伴い、先端工程で用いられるEUVに目が行きがちだが、i線を筆頭にKrFやArFにおいても、着実に市場成長を遂げていくと見ており、力を入れていきたいところだ。

―― NILを取り巻く環境も変化してきた印象です。
 武石 現在はロジック分野を中心に採用に向けた機運が高まってきており、我々としても顧客の本気度をひしひしと感じている。25年1~3月期と4~6月期にそれぞれ顧客サイトに評価装置を納入した。NILが得意とする3D形状のパターニングなどが評価されており、現状のベストシナリオとしては27年には量産に採用されていくことを期待している。

―― 生産体制も強化されていますね。
 武石 宇都宮事業所(栃木県宇都宮市)に建設していた新棟が竣工し、9月から半導体露光装置の組立を開始した。今後、レンズの加工能力も増強していく。新棟の稼働により、およそ30年までの需要増に対応できる体制が整ったと考えている。



(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2025年11月27日号1面 掲載

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